こんにちは、内科医Kappaです。
今回は「急性骨髄性白血病(AML)」という病気についてお話ししたいと思います。
白血病という病名を聞いたことがある方は多いと思いますが、実際にどのような病気なのか、詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。
急性骨髄性白血病は、大人に発症する急性白血病の中で最も多いタイプです。今回は、病名の意味から検査、治療方法まで、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います。
急性骨髄性白血病はどんな病気?
私たちの血液には、白血球、赤血球、血小板という3種類の細胞が存在しています。白血球は細菌やウイルスなどから体を守る役割、赤血球は酸素を全身に運ぶ役割、血小板は出血を止める役割をしています。
これらの血液細胞は、骨の中にある「骨髄」という場所で作られています。
急性骨髄性白血病は、この骨髄で血液細胞を作る途中の未熟な細胞ががん化し、異常に増えてしまう病気です。
白血病細胞が骨髄の中で増えると、正常な血液細胞を十分に作れなくなることがあります。その結果、正常な白血球が減ることで感染症にかかりやすくなったり、赤血球が減って息切れや疲れやすさが出たり、血小板が減って出血しやすくなったりします。
また、白血病細胞が血液中に増える場合もありますが、必ずしも白血球数が増えるわけではありません。白血球数が正常、あるいは減少している場合にも急性骨髄性白血病の可能性があります。
それでは、病名に含まれる「急性」と「骨髄性」には、どのような意味があるのでしょうか。
「急性」ってどういう意味?
白血病には、大きく分けて「急性白血病」と「慢性白血病」があります。
「急性」と「慢性」という言葉から、病気が進むスピードの違いをイメージする方も多いと思います。実際に、急性白血病は比較的短い期間で病気が進行することが多いのですが、厳密には進行速度だけで区別されているわけではありません。
急性白血病では、正常な血液細胞に成熟する前の未熟な細胞ががん化して増えることが特徴です。この未熟な細胞を「芽球(がきゅう)」と呼びます。
芽球が骨髄の中で増えると、正常な赤血球や血小板、白血球を作ることが難しくなります。そのため、貧血による息切れやだるさ、血小板減少による出血、正常な白血球の減少による感染症などが起こります。
一方、慢性白血病では、比較的成熟した血液細胞が増える病型もあります。ただし、慢性白血病にもいくつかの種類があり、病気の進み方や症状はそれぞれ異なります。
急性骨髄性白血病は、治療をしないと短期間で病状が悪化することがあるため、疑われた場合には速やかに血液内科で詳しい検査を受ける必要があります。
「骨髄性」ってどういう意味?
白血病は、がん化した細胞の種類によって「骨髄性」と「リンパ性」に分けられます。
私たちの血液細胞は、骨髄の中にある造血幹細胞という細胞から作られています。この造血幹細胞がさまざまな段階を経て、白血球、赤血球、血小板などに成長していきます。
このうち、顆粒球や単球、赤血球、血小板などにつながる細胞の系統を「骨髄系」と呼びます。一方、リンパ球につながる細胞の系統を「リンパ系」と呼びます。
骨髄系の未熟な細胞ががん化した病気が急性骨髄性白血病、リンパ系の未熟な細胞ががん化した病気が急性リンパ性白血病です。
この2つは治療方法が大きく異なるため、正確に区別することが非常に重要です。
ちなみに、子どもの急性白血病では急性リンパ性白血病が多いのに対して、大人では急性骨髄性白血病が多いという特徴があります。
つまり、急性骨髄性白血病とは、骨髄系の未熟な血液細胞ががん化し、比較的短期間で進行する病気ということになります。
どんな検査をするの?
まず、血液検査で白血球、赤血球、血小板の数を確認します。
急性骨髄性白血病では、貧血や血小板減少が見られることが多く、白血球数は増加している場合もあれば、正常あるいは減少している場合もあります。
また、LDHという検査値が高くなったり、白血病細胞が壊れることで尿酸(痛風とも関係する物質)が増えたりすることがあります。そのほか、血液を固める働きに異常が生じることもあります。
血液検査で急性骨髄性白血病が疑われた場合には、通常、「骨髄検査」を行います。
骨髄検査では、骨の中にある骨髄液などを採取し、白血病細胞がどのくらい存在するのか、どのような特徴を持っているのかを調べます。
さらに、白血病細胞の染色体や遺伝子の異常についても検査します。
急性骨髄性白血病は、同じ病名であっても、染色体や遺伝子の異常によって病気の性質や治療効果が異なることがわかっています。そのため、これらの検査は治療方針を決めるうえでも非常に重要です。
また、急性骨髄性白血病では正常な白血球が減少し、感染症を発症している場合があります。そのため、必要に応じて血液培養検査やCT検査などを行い、感染症がないかを確認します。
治療はどうなるの?
急性骨髄性白血病の治療は、患者さんの年齢や体調、白血病細胞の染色体・遺伝子異常などによって異なります。一般的には、複数のお薬を組み合わせた薬物療法が中心になります。
また、急性骨髄性白血病の中には「急性前骨髄球性白血病(APL)」という特殊なタイプがあり、ほかの急性骨髄性白血病とは治療方法が異なります。今回は、APL以外の急性骨髄性白血病について説明します。
従来から行われている強力な化学療法
急性骨髄性白血病では、シタラビンという抗がん剤と、イダルビシンまたはダウノルビシンなどの抗がん剤を組み合わせた治療が長年行われてきました。
この最初の治療を「寛解導入療法」と呼びます。寛解導入療法は、骨髄の中に増えた白血病細胞を大きく減らし、「寛解」という状態を目指す治療です。
寛解とは、骨髄中の白血病細胞が一定の基準以下に減少し、正常な血液細胞の回復などが確認された状態を指します。ただし、寛解になったからといって、必ずしも白血病細胞が完全になくなったというわけではありません。通常の検査では確認できないほど少ない白血病細胞が残っている場合もあります。
寛解導入療法では、抗がん剤による吐き気や下痢、脱毛などの副作用が起こることがあります。また、正常な血液細胞も大きく減少するため、感染症や出血などに注意が必要です。
特に、治療後は白血球が非常に少ない状態が数週間続くことがあり、感染症にかかりやすくなります。そのため、入院して治療を行い、必要に応じて防護環境と呼ばれる感染症を予防するための環境で過ごしていただくことがあります。
また、白血球が少ない時期には、細菌が血液中に入り込んで重い感染症を起こす「敗血症」などが問題になることもあります。そのため、発熱などの症状が出た場合には、速やかな対応が必要です。
寛解後の治療
寛解導入療法によって寛解が得られた場合でも、通常はそこで治療が終了するわけではありません。
白血病の再発を防ぐために、「地固め療法」と呼ばれる追加の治療を行います。地固め療法では、さらに抗がん剤を投与することで、体の中に残っている可能性のある白血病細胞を減らし、再発のリスクを下げることを目指します。
また、白血病の種類や再発リスクによっては、「造血幹細胞移植」という治療を検討することもあります。どのような治療を行うかは、白血病細胞の染色体・遺伝子異常や、最初の治療に対する反応などを考慮して決定します。
アザシチジンとベネトクラクスを組み合わせた治療
近年、急性骨髄性白血病の治療に新しい選択肢が登場しています。
その代表的なものが、「アザシチジン」と「ベネトクラクス」という2種類のお薬を組み合わせた治療です。この治療は2021年に日本でも承認されました。
アザシチジンは、白血病細胞の遺伝子の働きを調整する仕組みに作用するお薬です。一方、ベネトクラクスは、白血病細胞が生き残るために利用しているBCL-2というタンパク質の働きを抑えるお薬です。
この2つを組み合わせることで、白血病細胞を減らす効果が期待できます。
この治療は、もともとご高齢の患者さんや、ほかに病気を持っているなどの理由で強力な化学療法を受けることが難しい患者さんを中心に使用されてきました。
しかし、近年では強力な化学療法を受けられる患者さんに対しても、この治療が有効である可能性が研究されています。
ただし、現時点ですべての患者さんにおいて、従来の強力な化学療法と同じように使用できることが確立しているわけではありません。実際にどの治療を選択するかは、患者さんの状態や白血病の特徴などによって判断されます。
また、アザシチジンとベネトクラクスを組み合わせた治療でも、白血球や血小板などが大きく減少することがあり、感染症や出血などには十分な注意が必要です。決して副作用が少ない治療というわけではありません。
そのほかにも、急性骨髄性白血病では、特定の遺伝子異常に対して効果を発揮する分子標的薬などが使用されるようになっています。
このように、急性骨髄性白血病の治療は、患者さんの状態や白血病の特徴に応じて、さまざまな選択肢から検討されるようになってきています。
まとめ
急性骨髄性白血病は、骨髄で血液細胞を作る途中の未熟な細胞ががん化し、比較的短期間で進行する病気です。
白血病細胞が増えることで正常な血液細胞を作れなくなり、貧血や出血、感染症などが起こることがあります。そのため、急性骨髄性白血病が疑われた場合には、速やかに詳しい検査を受けることが重要です。
治療は抗がん剤などを用いた薬物療法が中心ですが、近年では新しい治療法も登場しており、患者さんの年齢や体調、白血病細胞の遺伝子異常などに応じて治療方法を選択することができるようになってきました。
急性骨髄性白血病の治療は長期間に及ぶこともあり、副作用への対応も必要になります。病気や治療について不安なことがあれば、遠慮せずに主治医や医療スタッフに相談していただければと思います。
急性骨髄性白血病(AML)の中には、「急性前骨髄球性白血病(APL)」という、病気の特徴や治療方法が大きく異なるタイプがあります。また、急性白血病には、骨髄性とは別に「急性リンパ性白血病(ALL)」もあり、それぞれに応じた検査や治療が必要です。
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※この記事は急性骨髄性白血病について一般的な情報を説明したものです。実際の検査や治療方針は、病気の状態や患者さんの体調などによって異なります。個別の診断や治療については主治医にご相談ください。

