骨髄異形成症候群 どんな病気?

こんにちは、内科医κです。

血液内科医として勤務する中で、患者さんや研修医の先生向けの血液の病気についての情報が不足していると感じており、少しでもお役に立てればと情報発信しています。

今日は、あまり一般の方々には知られていない病気、骨髄異形成症候群について説明したいと思います。

血液がうまく作れなくなる病気、骨髄異形成症候群について

骨髄異形成症候群はご高齢の方に多い病気です。この病気は骨髄の中で血液を作る親になる細胞である造血幹細胞に生まれた後に遺伝子の異常が起こってしまい、造血幹細胞が血液をうまく作ることができなくなる病気です。

そのため、貧血になったり、血を止める血小板が少なくり血が止まりにくくなったり、体を守る免疫の細胞である白血球が異常に少なくなったりします。これらの血液の成分が減る程度は、患者さん一人一人で大きく違います。ほとんど気にならないくらいにしか減らない患者さんもいれば、頻繁に輸血をしないといけない患者さんもいます。

またこの病気は急性骨髄性白血病の前段階という側面もあります。造血幹細胞の遺伝子異常が徐々に積み重なっていくと、最終的に白血病の細胞へと変化してしまいます。白血病へのなりやすさは診断された時のリスク分類(IPSS, IPSS-Rと呼ばれる指標があります)によって、ある程度予測することができます。しかし、完全では無いので急に白血病へ進行する場合もあります。

必要な検査は?

血液検査で白血球、赤血球、血小板といった血液の成分が複数異常がある場合にこの病気が疑われます。また、鉄は足りているのに貧血が長期間続いている、といった時も骨髄異形成症候群を疑うことがあります。特に血液の成分を顕微鏡で見たときに、形に異常がある(これを異型性と呼びます)ときには骨髄異形成症候群が強く疑われます。

血液検査で骨髄異形成症候群が疑われた際には「骨髄検査」を行います。骨髄検査では血液の細胞の形を見て、異型性が無いか、それぞれの細胞の割合に偏りはないか、白血病の細胞が出ていないかをチェックします。

また、骨髄検査の際に血液の細胞の染色体の検査をします。染色体は遺伝子を運んでいるものであり、染色体異常があれば遺伝子の異常が起こっていることを意味します。染色体異常の種類や数は白血病へのなりやすさと関連があるので、非常に重要な検査項目になります。

治療はどうするの?

現代の医療では骨髄異形成症候群の異常な造血幹細胞を正常な働きをする造血幹細胞に戻すことはできません。そのため、他の人の造血幹細胞と入れ替える造血幹細胞移植(いわゆる骨髄移植)が唯一の根治的な治療になります。ただし、造血幹細胞移植は非常に大変な治療で、造血幹細胞移植の治療のせいで命を落としてしまう可能性もあります。そのため、比較的若い人(原則65歳まで)でなければ造血幹細胞移植を受けることができません。若い方であっても、白血病になる可能性が高い(これを「高リスク」と呼びます)人だけに造血幹細胞移植を行います。

白血病になる可能性が低い(これを「低リスク」と呼びます)人の場合は、輸血や血液の成分を増やす治療になります。白血球は他の人からもらうことができませんが、その他の赤血球や血小板は輸血で他の人から補ってもらうことができます。

ただし、輸血にもいくつか副作用があるので、輸血は必要最小限の量に止めるように配慮します。赤血球の輸血の中にはたくさん鉄が含まれており、赤血球輸血をたくさんすると体に鉄がたまる「鉄過剰症」という病気になります。鉄過剰症になると肝障害や心障害を起こしますので、鉄を体から抜く薬を飲んでもらう場合があります。また、血小板の輸血を何度もすると、血小板を壊す抗体(HLA抗体)が作られ、血小板の輸血が効かなくなってしまう場合があります。

高リスクの高齢者、また移植を受ける前の高リスクの若年者の場合には、DNAメチル化阻害薬という薬が使われます。骨髄異形成症候群では遺伝子異常が起こるだけでなく、遺伝子の使い方にも異常が起こっています。DNAメチル化阻害薬は遺伝子の使い方を正常に近づけて、血液を作る力を回復させたり、白血病の細胞を減らす効果があります。ただし、ずっと効き続けるわけでは無いので、若年者の場合は効果が出たら速やかに移植の準備を進める必要があります。

※この記事は日本血液学会 造血器腫瘍ガイドラインを参照して作っています。

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