多発性骨髄腫とは?症状・検査・治療について

こんにちは、内科医Kappaです。

今日は、血液のがんの一つである「多発性骨髄腫」についてお話ししたいと思います。

多発性骨髄腫は、白血病や悪性リンパ腫と比べると、あまり知られていない病気かもしれません。しかし、血液内科では比較的よく遭遇する病気の一つです。

また、多発性骨髄腫は、この十数年で治療が大きく進歩した病気でもあります。今回は、多発性骨髄腫がどのような病気なのか、必要な検査や現在の治療方法について説明していきたいと思います。

多発性骨髄腫とは?

多発性骨髄腫は、「形質細胞」という細胞が悪性腫瘍(がん)になった病気です。

形質細胞は、私たちの体を細菌やウイルスなどから守る「抗体」を作る細胞です。例えば、ワクチンを接種すると、その病原体に対する抗体が作られますが、この抗体を実際に作っているのが形質細胞です。

このように形質細胞は、私たちの免疫にとって重要な役割を担っています。しかし、形質細胞ががん化して骨髄の中で異常に増えると、さまざまな症状が現れるようになります。

どのような症状が出る?

多発性骨髄腫には、4つの代表的な臓器障害があります。「貧血」「腎機能障害」「高カルシウム血症」「骨病変」です。

これらは、それぞれの英語の頭文字をとって「CRAB(クラブ)」と呼ばれています。

ただし、すべての患者さんにこれらの症状が現れるわけではありません。また、これらの症状がなくても、検査結果によっては治療が必要と判断される場合があります。

① 貧血

骨髄腫細胞は、血液を作る場所である「骨髄」の中で増えていきます。そのため、正常な血液細胞がうまく作られなくなり、貧血になることがあります。

貧血になると、息切れやだるさ、動悸などの症状が現れることがあります。

② 腎機能障害

腎臓は、体の中の老廃物を尿として排出する重要な臓器です。

多発性骨髄腫では、骨髄腫細胞が作る異常なタンパク質が腎臓に負担をかけることで、腎臓の働きが悪くなることがあります。また、高カルシウム血症や脱水などが加わることで、腎機能障害が悪化する場合もあります。

腎機能障害が進行すると、むくみやだるさなどが現れることがありますが、初期には自覚症状がほとんどない場合もあります。

③ 高カルシウム血症

カルシウムは骨や歯を作る重要な成分ですが、血液中のカルシウム濃度が高くなりすぎると、さまざまな症状が現れます。

多発性骨髄腫では、骨髄腫細胞の影響で骨が壊されやすくなり、骨に含まれているカルシウムが血液中に出てくることで、高カルシウム血症になることがあります。

高カルシウム血症になると、尿の量が増えて脱水状態になったり、吐き気や便秘が生じたりすることがあります。重症になると、意識がもうろうとすることもあります。

④ 骨病変

多発性骨髄腫では、骨髄腫細胞が骨を壊す細胞の働きを促進するなどして、骨がもろくなってしまうことがあります。

そのため、背骨の圧迫骨折などを起こしやすくなり、腰や背中の痛みが現れることがあります。場合によっては、わずかな力が加わっただけで骨折してしまうこともあります。

このように、多発性骨髄腫ではさまざまな症状が現れます。しかし、貧血や腰痛、腎機能障害などは、ほかの病気でもよく見られる症状です。そのため、多発性骨髄腫と診断されるまでに時間がかかる場合もあります。

どのような検査をする?

血液検査・尿検査

多発性骨髄腫は、抗体を作る形質細胞ががん化した病気です。そのため、骨髄腫細胞にも抗体を作る性質が残っていることがあります。

ただし、骨髄腫細胞は、通常の抗体とは異なる、同じ種類の異常なタンパク質を大量に作ることがあります。このタンパク質を「Mタンパク」と呼びます。

Mタンパクは、特殊な血液検査や尿検査で調べることができます。また、抗体の一部分である「遊離軽鎖」というタンパク質を調べることも重要です。

ただし、Mタンパクが見つかったからといって、必ず多発性骨髄腫というわけではありません。Mタンパクが見つかっても、治療を必要としない状態の方もいます。

また、骨髄腫細胞がMタンパクをほとんど作らない場合もあるため、血液検査や尿検査の結果だけで診断できるわけではありません。

骨髄検査

血液検査などで多発性骨髄腫が疑われた場合には、通常、「骨髄検査」を行います。

骨髄検査では、骨の中にある骨髄液などを採取し、骨髄腫細胞がどのくらい増えているかを調べます。また、骨髄腫細胞の特徴や、染色体・遺伝子の異常などを調べることもあります。

これらの検査は、多発性骨髄腫の診断だけでなく、病気の特徴や今後の経過を予測するためにも重要です。

画像検査

多発性骨髄腫では、骨がもろくなったり、骨の一部が壊れたりすることがあるため、画像検査も重要です。

現在では、全身のCT検査やMRI検査、PET-CT検査などを用いて、骨の異常や骨髄腫細胞が増えている場所を調べます。

以前は全身のX線検査がよく行われていましたが、現在ではCTやMRIなどによって、X線検査では見つけにくい病変も調べられるようになっています。

治療が必要かどうかは、どのように判断する?

多発性骨髄腫では、骨髄の中に異常な形質細胞が増えていても、すぐに治療が必要になるとは限りません。

例えば、「くすぶり型多発性骨髄腫」と呼ばれる状態では、骨髄腫細胞が増えていても、病気による臓器障害などが認められず、すぐには治療を始めずに経過を観察することがあります。

一方、貧血や腎機能障害、骨病変などが多発性骨髄腫によって生じている場合には、治療が必要になります。

また、これらの臓器障害がまだ現れていなくても、骨髄腫細胞の割合や血液検査、MRI検査などの結果から、病気が進行する可能性が非常に高いと判断される場合には、治療を開始することがあります。

そのため、血液検査、骨髄検査、画像検査などの結果を総合して、治療が必要かどうかを判断します。

多発性骨髄腫の治療について

多発性骨髄腫は、現在でも完全に治すことが難しい病気です。しかし、新しい治療薬が次々と登場したことで、以前と比べて長期間にわたって病気を抑えられる患者さんが増えてきました。

治療では、骨髄腫細胞をできるだけ減らし、病気が再び増えるまでの期間を長くすることが重要になります。また、骨折や腎機能障害などを防ぎ、できるだけ普段の生活を維持することも大切な目標です。

治療方法は、大きく分けて「自家造血幹細胞移植が可能な患者さん」と「自家造血幹細胞移植が難しい患者さん」で異なります。

自家造血幹細胞移植が可能な患者さん

比較的若く、体調や臓器の働きが保たれている患者さんでは、「自家造血幹細胞移植」という治療を検討します。

自家造血幹細胞移植とは、あらかじめ患者さん自身の造血幹細胞を採取しておき、強力な抗がん剤を投与した後に、その造血幹細胞を体に戻す治療です。

自家移植を行うことで、病気が再び増えるまでの期間を長くする効果が期待できます。ただし、体への負担が大きいため、年齢だけでなく、全身状態や合併症、腎臓などの臓器の働きを考慮して、移植が可能かどうかを判断します。

自家移植を行う前には、複数のお薬を組み合わせた治療によって、骨髄腫細胞を減らします。

以前は3種類のお薬を組み合わせた治療が中心でしたが、近年では4種類のお薬を組み合わせた治療も重要な選択肢になっています。異なる仕組みで作用するお薬を組み合わせることで、より高い治療効果を目指します。

また、自家移植を受けた後も、病気が再び増えるのを抑えるために「維持療法」と呼ばれる治療を続けることがあります。

自家造血幹細胞移植が難しい患者さん

高齢の患者さんや、合併症などによって自家移植が難しい患者さんでは、お薬による治療が中心になります。

以前は、自家移植を受けられない患者さんでは十分な治療効果を得ることが難しい場合もありました。しかし、近年では治療効果の高いお薬が増え、移植を行わなくても長期間にわたって病気を抑えられる患者さんが増えてきました。

現在では、複数のお薬を組み合わせた治療が中心となっています。特に、骨髄腫細胞の表面にあるタンパク質を標的とする抗体薬などが登場したことで、治療の選択肢が大きく広がりました。

ただし、多発性骨髄腫はご高齢の患者さんに多い病気です。そのため、治療効果だけでなく、副作用や体への負担にも注意する必要があります。

患者さんの体調や合併症、日常生活の状況などを考慮しながら、それぞれの患者さんに合った治療方法を選択します。

骨病変に対する治療

多発性骨髄腫では、骨がもろくなることで骨折を起こしやすくなるため、骨を守るための治療も重要です。

骨の破壊を抑えるお薬を使用することで、骨折などの骨に関する合併症を減らす効果が期待できます。また、骨折や骨の痛みが強い場合には、放射線治療や整形外科的な治療を検討することもあります。

これらの治療は、骨髄腫そのものに対する治療と並行して行うことがあります。

再発した場合の治療

多発性骨髄腫は、治療によって病気がよくなっても、時間がたつと再び骨髄腫細胞が増えてくることがあります。これを「再発」と呼びます。

再発した場合には、それまでに使用したお薬や治療の効果、副作用、患者さんの体調などを考慮して、次の治療方法を選択します。

近年では、これまでのお薬とは異なる仕組みで骨髄腫細胞を攻撃する治療も登場しています。

例えば、患者さん自身の免疫細胞を利用する「CAR-T細胞療法」や、免疫細胞が骨髄腫細胞を攻撃するように働きかける「二重特異性抗体」と呼ばれる治療です。

これらは、主に再発・難治性の多発性骨髄腫に対して使用される治療です。すべての患者さんが受けられるわけではありませんが、治療の選択肢は以前と比べて大きく増えています。

まとめ

多発性骨髄腫は、抗体を作る形質細胞ががん化し、骨髄の中で異常に増える病気です。

代表的な臓器障害として、貧血、腎機能障害、高カルシウム血症、骨病変の4つがあります。ただし、これらの症状がなくても、検査結果によっては治療が必要になる場合があります。

また、多発性骨髄腫では、異常な形質細胞が増えていても、すぐに治療が必要とは限りません。血液検査や骨髄検査、画像検査などの結果を総合して、治療方針を判断します。

多発性骨髄腫は、現在でも完全に治すことが難しい病気ですが、この十数年で治療は大きく進歩しています。自家造血幹細胞移植に加えて、さまざまなお薬や新しい免疫療法が登場したことで、治療の選択肢は大きく広がりました。

多発性骨髄腫の治療は長期間にわたることも多いため、病気を抑えることだけでなく、副作用を減らし、できるだけ普段の生活を維持することも重要です。

病気や治療についてわからないことがあれば、主治医や医療スタッフと相談していただければと思います。

※この記事は多発性骨髄腫について一般的な情報を説明したものです。実際の検査や治療方針は、病気の状態や患者さんの体調などによって異なります。個別の診断や治療については主治医にご相談ください。

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