ろ胞性リンパ腫 特徴や治療について

悪性リンパ腫の中にはろ胞性リンパ腫という病型(タイプ)があります。聞いたことがない人がほとんどと思いますが、実は日本で2番目に多いリンパ腫で、徐々に発症する人が増えている病気です。今回はろ胞性リンパ腫について分かりやすく解説したいと思います。

ろ胞性ってどういう意味?

正常なリンパ節(体を守る砦のような場所)を顕微鏡で見ると、リンパろ胞というリンパ球が集まった組織が見えます。同じようにろ胞性リンパ腫の組織を顕微鏡で見てみると、リンパ濾胞に似た組織を見つけることができます。このように病気だけど正常リンパ節のようにリンパ濾胞が見えるため、ろ胞性リンパ腫という名前がつけられました。正常なリンパろ胞はリンパ球の一種のB細胞によって主にできているため、ろ胞性リンパ腫はB細胞が悪性腫瘍に変化したリンパ腫になります。

ろ胞性リンパ腫の細胞はあまり増えるスピードが早くないため、ゆっくりと進行する性質があります。ゆっくりと進行するリンパ腫のことを低悪性度リンパ腫と呼び、ろ胞性リンパ腫は低悪性度リンパ腫の中で最も多いタイプになります。

 

どんな検査をするの?

どのリンパ腫にも言えることですが、まず診断するには「生検」という腫れている組織の一部を採取して顕微鏡で検査する必要があります。診断するためだけなので、全部の病気の組織を切除する必要はありません。この顕微鏡の検査で診断が確定されます。

また、病気がどこまで広がっているか(これを病期と呼びます)を調べるためにPET-CT検査を受けます。

さらに、PET-CTでは骨髄という骨の中にリンパ腫が広がっているかを正確に評価することが難しいため、骨髄検査という骨髄の中にリンパ腫の細胞がいるか調べる検査も受ける必要があります。ろ胞性リンパ腫では骨髄に病気がある方が多く、必ず検査した方が良いと思います。

病期の決め方については以前に書かれているこちらの記事も参考にしてください(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫とは)。

 

治療はどのように決まる?

ろ胞性リンパ腫はStage1,2とStage3,4で治療がまず分かれます。

Stage1,2で病気の場所が小さな範囲にしかない場合には、放射線を当てる治療のみを行うという選択肢があります。一部の患者さんで、放射線治療のみで治癒する方がいます(全員ではありません、少数派と考えておいた方が良いです)。ただし、広い範囲に放射線を当ててしまうと、副作用がとても強くなってしまうので、実際にはStage1の一部の患者さんのみが放射線治療の適応となります。

Stage3,4や病気が比較的広い場所にある方の場合は体全体の病気の量が多いか少ないかで大きく治療方針が分かれます。医学的にはGELF基準やBNLI基準という基準で病気の量が多いかどうか判断しますが、病気の量が多いか少ないかは主治医に聞くと良いでしょう。

 

低腫瘍量の治療方針

病気の量が少ない(これを低腫瘍量と呼びます)患者さんの場合は、通常は治療をしないで病気の量が多くなるまで様子を見ます(これを無治療経過観察と呼びます)。無治療経過観察というと「何もしないなんてインチキだ!」と感じる方もいると思います。ただ、この治療しないのにも理由があります。一つ目は低腫瘍量の患者さんの場合、リンパ腫によって症状が出ていない状態なので、治療するメリットを感じにくいことが挙げられます。二つ目の理由として、現代医療ではろ胞性リンパ腫を完治させることができないことが挙げられます。治療によってろ胞性リンパ腫を一時的に見た目小さくする、もしくは無くすことができます(これを寛解と呼びます)。しかし、濾胞性リンパ腫は治療後も目に見えない、検査で見つけられないリンパ腫細胞が必ず残ってしまい、いつか必ず再発してしまうリンパ腫なのです(数年後、数十年後というケースもある)。ですので、治療をできるだけ遅らせた方が長い目で見た時に長生きできると考えられています。

高腫瘍量の治療方針

病気の量が多い(これを高腫瘍量と呼びます)患者さんの場合は、リンパ腫によって実生活に困ることが出てきそうまたは出てきている状態のため、速やかに治療を開始します。治療は何種類かの薬を組み合わせた化学療法になります。

ろ胞性リンパ腫の最初の治療にはいくつかの種類があります。代表的な治療としては、リツキシマブ(商品名:リツキサン)とベンダムスチン(商品名:トレアキシン)という治療があります。リツキシマブはCD20というタンパク質にだけ反応するお薬になります。CD20はB細胞の目印となるタンパク質で、B細胞にしか出ていないという特徴があります。そのため、リツキシマブはB細胞だけしか攻撃しないため、副作用が少なめのお薬となっています。ベンダムスチンはいわゆる抗がん剤の一種ですが、一般的な抗がん剤に比べて脱毛の副作用が少ないとされています。ただし、皮膚の蕁麻疹や免疫力を落としやすいといった他の抗がん剤と少し異なった副作用が出やすいです。

その他にもいくつかの治療選択肢があります。今後、リンパ腫の治療について詳しく解説していきたいと思います。

 

※この記事は日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドラインを参照して作られています。

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