こんにちは、内科医Kappaです。
今回は「急性リンパ性白血病(ALL)」という病気についてお話ししたいと思います。
急性白血病には、大きく分けて「骨髄性」と「リンパ性」の2つのタイプがあります。急性リンパ性白血病は、子どもの白血病で最も多いタイプですが、大人にも発症する病気です。
大人と子どもでは病気の特徴や治療方法に違いがあるため、今回は私の専門である大人の急性リンパ性白血病を中心に説明していきたいと思います。
急性リンパ性白血病とは?
私たちの血液には、白血球、赤血球、血小板という3種類の細胞が存在しています。白血球は細菌やウイルスなどから体を守る役割、赤血球は酸素を全身に運ぶ役割、血小板は出血を止める役割をしています。
これらの血液細胞は、骨の中にある「骨髄」という場所で作られています。
急性リンパ性白血病は、白血球の一種であるリンパ球になる途中の未熟な細胞ががん化し、異常に増えてしまう病気です。
リンパ球には、主にB細胞とT細胞という2種類があります。そのため、急性リンパ性白血病も大きく分けて「B細胞性」と「T細胞性」の2つのタイプに分かれます。この2つは病気の特徴や治療方法が異なるため、正確に区別することが重要です。
どのような症状が出る?
急性リンパ性白血病では、骨髄の中で白血病細胞が異常に増えることで、正常な血液細胞を十分に作れなくなります。
その結果、赤血球が減って貧血による息切れやだるさが出たり、血小板が減って鼻血や歯茎からの出血、皮膚のあざなどが生じたりすることがあります。また、正常な白血球が減少することで感染症にかかりやすくなり、発熱などの症状が出ることもあります。
そのほか、白血病細胞が肝臓や脾臓、リンパ節などに広がることで、これらの臓器が腫れる場合があります。肝臓や脾臓が大きくなると、お腹が張るなどの症状が出ることもあります。
また、急性リンパ性白血病では、白血病細胞が脳や脊髄の周囲にある「中枢神経」に広がることがあります。その場合には、頭痛や吐き気などの症状が出ることもあります。
ただし、これらの症状がすべての患者さんに現れるわけではありません。血液検査の異常をきっかけに病気が見つかることもあります。
どのような検査をする?
まず、血液検査で白血球、赤血球、血小板の数や、血液中に異常な細胞がないかを調べます。
急性リンパ性白血病では、血液を顕微鏡で観察すると白血病細胞が見つかることがあります。また、LDHという検査値が上昇する場合もあります。
血液検査で急性リンパ性白血病が疑われた場合には、通常、「骨髄検査」を行います。骨髄検査では、骨の中にある骨髄液などを採取し、白血病細胞がどのくらい存在するのか、どのような特徴を持っているのかを調べます。
さらに、白血病細胞の表面にあるタンパク質の特徴などを調べることで、B細胞性なのかT細胞性なのかを判断します。また、白血病細胞の染色体や遺伝子の異常についても検査します。
フィラデルフィア染色体とは?
大人の急性リンパ性白血病では、特に重要な検査の一つが「フィラデルフィア染色体」の有無を調べる検査です。
フィラデルフィア染色体とは、9番と22番の染色体の一部が入れ替わることで生じる異常な染色体のことです。この異常によって、「BCR::ABL1」という融合遺伝子が作られます。
融合遺伝子とは、通常は別々に存在する2つの遺伝子がつながることで生じた異常な遺伝子のことです。
フィラデルフィア染色体は、大人のB細胞性急性リンパ性白血病の一部で認められます。すべての患者さんに見つかるわけではありませんが、この異常があるかどうかによって治療方法が大きく変わります。
そのため、血液や骨髄液を用いて、フィラデルフィア染色体やBCR::ABL1融合遺伝子があるかどうかを調べます(染色体検査やRT-PCR検査、FISH検査などと呼ばれる検査です)。
このほかにも、急性リンパ性白血病ではさまざまな遺伝子異常が見つかることがあり、治療方針を決めるために重要な情報となります。
どんな治療を受ける?
急性リンパ性白血病の治療は、B細胞性かT細胞性か、フィラデルフィア染色体があるかどうか、患者さんの年齢や体調などによって異なります。
一般的には、複数の抗がん剤を組み合わせた「多剤併用化学療法」が治療の中心になります。また、フィラデルフィア染色体陽性の場合には、分子標的薬と呼ばれるお薬も重要な役割を担います。
フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病
フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病では、「チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)」と呼ばれるお薬が重要な役割を担います。
このお薬は、フィラデルフィア染色体に伴って生じる「BCR::ABL1融合遺伝子」から作られる異常なタンパク質の働きを抑えることで、白血病細胞が増えるのを防ぎます。
以前は、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病は治療が難しい病気でした。しかし、チロシンキナーゼ阻害薬が登場したことで、治療成績は大きく改善しました。
日本では、チロシンキナーゼ阻害薬と複数の抗がん剤を組み合わせた治療が行われています。
フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ性白血病
フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ性白血病では、複数の抗がん剤を組み合わせた「多剤併用化学療法」が治療の中心となります。
特に、若い患者さんでは、子どもの急性リンパ性白血病に対して行われてきた治療方法を参考にした「小児型プロトコール」が使用されることがあります。
ただし、急性リンパ性白血病の治療は、年齢だけで決まるわけではありません。患者さんの体調や白血病の特徴などを考慮して、治療方法を選択します。
中枢神経への再発を防ぐ治療
急性リンパ性白血病では、白血病細胞が脳や脊髄の周囲に広がることがあります。そのため、通常の抗がん剤による治療に加えて、中枢神経への再発を防ぐための治療も重要です。
代表的な方法として、腰から細い針を入れて、脳や脊髄の周囲を満たしている液体(髄液)の中に抗がん剤を投与する「髄腔内投与」という治療があります。
また、使用する治療法によっては、中枢神経にも効果が期待できる抗がん剤を組み合わせることがあります。
造血幹細胞移植について
急性リンパ性白血病では、病気の特徴や治療への反応によって、「造血幹細胞移植」という治療を検討することがあります。ただし、すべての患者さんに移植が必要というわけではありません。
近年では、白血病細胞がどのくらい減ったのかを詳しく調べる検査も重要になっています。通常の顕微鏡では確認できないほど少ない白血病細胞を調べることを「微小残存病変(MRD)」の評価と呼びます。
MRDの結果なども参考にしながら、移植を行うかどうかを判断します。
治療の副作用について
急性リンパ性白血病の治療では、複数のお薬を長期間使用することが多いため、副作用への注意が必要です。
多剤併用化学療法では、吐き気、下痢、強い倦怠感、脱毛、手足のしびれ、口内炎などが起こることがあります。また、肝機能障害や腎機能障害、正常な白血球の減少による感染症などにも注意が必要です。
チロシンキナーゼ阻害薬では、むくみ、発疹、下痢などが起こることがあります。ただし、お薬によって副作用の特徴は異なります。
これらの副作用がすべての患者さんに現れるわけではありません。副作用を予防したり、症状に応じて治療を調整したりしながら、治療を進めていきます。
まとめ
急性リンパ性白血病は、リンパ球になる途中の未熟な細胞ががん化し、異常に増えてしまう病気です。
子どもに多い白血病ですが、大人にも発症します。また、B細胞性とT細胞性があり、フィラデルフィア染色体などの遺伝子異常によっても病気の特徴や治療方法が異なります。
治療には複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法が使用されますが、フィラデルフィア染色体陽性の場合には、チロシンキナーゼ阻害薬も重要な役割を担います。
急性リンパ性白血病の治療は長期間に及ぶことも多く、副作用に注意しながら治療を続ける必要があります。病気や治療についてわからないことがあれば、主治医や医療スタッフと相談していただければと思います。
急性白血病には、今回ご紹介した「急性リンパ性白血病(ALL)」のほかに、「急性骨髄性白血病(AML)」もあります。同じ急性白血病でも、がん化する細胞の種類によって、病気の特徴や治療方法が異なります。
急性骨髄性白血病について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

※この記事は急性リンパ性白血病について一般的な情報を説明したものです。実際の検査や治療方針は、病気の状態や患者さんの体調などによって異なります。個別の診断や治療については主治医にご相談ください。

