悪性リンパ腫にはたくさんの病型(タイプ)がありますが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は日本人に最も多いタイプのリンパ腫になります。日本人が発症するリンパ腫全体の約30-40%を占めます。
B細胞って何?
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の「B細胞」は体を守る免疫に関係するリンパ球の一種になります。B細胞は「抗体」という体を守るミサイルのような物質を作る細胞(形質細胞)の元になる細胞です。新型コロナウィルスワクチンのニュースに出てくる「抗体価」はこの抗体の量を意味しています。つまり、B細胞は体を守る免疫において非常に重要な役割をしています。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫はこのB細胞が悪性腫瘍になった病気です。
びまん性と大細胞型って何?
びまん性は医学用語で「全体」を意味します。大細胞型というのは大きさの大きい細胞という意味です。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の病変を顕微鏡で見ると、サイズが大きくなったB細胞が顕微鏡の画面全体に広がって見えることを意味しています。そして、腫瘍の細胞の大きさが大きいと腫瘍細胞が増える速度が早くなる傾向があります。そのため、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は進行速度が早い病気になります。一般的には1ヶ月経過すると病気が一回り以上大きくなっていきます。つまり、月単位で病気が進んでいきます。
どんな検査をするの?
この病気を診断するには「生検」という腫れている組織の一部を採取して顕微鏡で検査する必要があります。診断するためだけなので、全部の病気の組織を切除する必要はありません。この顕微鏡の検査で診断が確定されます。また、病気がどこまで広がっているか(これを病期と呼びます)を調べるためにPET-CT検査を受けることが望ましいです。ただし、PET-CTでは骨髄という骨の中にリンパ腫が広がっているかを正確に評価することが難しいため、骨髄検査も受ける必要があります。骨髄検査は痛みがある検査なのでできる限り受けたくない検査と思いますが、病期を診断するために必須の検査になります(痛みがもっと減らせれば良いのですが・・・)。
病期はどのように決まるの?
悪性リンパ腫の病期の決め方は、その他のがん(胃がん、大腸がん、乳がんなど)に比べると分かりやすい決め方になっています。ざっくりと言うと、1箇所のリンパ節のみ病気がある時はStage1になります。胸より上の部分だけ(例:首と脇の下)、もしくはお腹より下の部分(足の付け根とお腹の中)のリンパ節にだけに病気がある場合はStage2になります。横隔膜(胸とお腹を分ける膜)を超えて病気のリンパ節がある場合(例:脇の下と足の付け根)はStage3となります。そして、リンパ節以外の場所に病気が広がっている(骨髄、胃など)場合をStage4になります。Stageが上がるにつれて治りにくくなるのは事実ですが、他のがんと違ってStage4だから末期、治らないわけではありません。Stage4と言われても諦めずに治療に望んでもらえたらと思います。
どんな治療を受けるの?
治療は「R-CHOP療法」(アール、チョップ療法と読みます)という治療が最も良い治療になります(ご高齢の方の場合、違う治療が選択される場合もあります)。この治療では5種類のお薬を組み合わせることで、治療効果を最大にして副作用をできる限り減らそうと工夫されています。
R-CHOP療法のRは「リツキシマブ」と言うお薬の頭文字です。リツキシマブはCD20というB細胞の目印めがけて攻撃するお薬です。B細胞だけに効く薬のため、体に感じる副作用が少ないという特徴があります。ただし、インフュージョン・リアクションと呼ばれるリツキシマブに特徴的な副作用が出ることがあります。
CHOP療法は3つの抗がん剤とステロイドを組み合わせた治療です。これらの抗がん剤の副作用には吐き気がありますが、近年では吐き気止めが非常に良くなり、以前に比べると治療を受けやすくなっています。
これらの薬剤の投与を通常は3週間に1回行います。そして、この3週間に一回のサイクルを通常は6-8回受けることになります。Stage1,2で放射線を当てる場所にしか病気がない場合には、R-CHOP療法を3回受けた後に放射線治療を受ける治療法もあります。
どちらの場合でも半年前後の長い治療になります。しんどい治療ではありますが、完治する可能性がある病気です。患者の皆さんの治療が完遂できることを祈っています。
※この記事は日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドラインを参照して作られています。