悪性リンパ腫とは?

大腸がん、乳がんといった病気は聞いたことがあっても、悪性リンパ腫という病気は聞き慣れない方が多いのではないでしょうか。私が診察する患者さんの多くも「悪性リンパ腫という病気を初めて聞きました。」とお話しされます。

そこで、今回は悪性リンパ腫について分かりやすく解説したいと思います。

悪性リンパ腫のリンパって何?

「リンパ」という言葉には馴染みがある方は多いと思います。リンパの流れ、リンパマッサージなど日常でも使用されていますね。人間の体には血液とは別にリンパ液という液体が流れていて、リンパ管とリンパ節の中を流れています。このリンパ節はリンパ管の中のお城の役割をしていて、悪い敵がきた時に戦う場所になります。風邪をひいたり、虫歯になると人によっては首にグリグリができることがあると思います。このグリグリが戦場となっているリンパ節です。このリンパ節の中にはたくさんの「リンパ球」と言う血液の細胞が兵隊として住んでいます。このリンパ球たちは敵が来たら、敵の形に合わせた武器を作ったりします(これを抗体と呼びます)。このように、リンパ球は外敵から身を守るために重要な役割をしています。悪性リンパ腫はこのリンパ球たちががんとなった病気です。

悪性リンパ腫の悪性ってどういう意味?

良性の腫瘍(腫瘍は体の中のできもののようなイメージです)と悪性の腫瘍の違いはなんでしょうか。非常にざっくりと言うと、悪性の腫瘍は「勝手に様々な場所に広がっていき、正常な臓器を蝕んでしまう」腫瘍です。良性腫瘍はできた場所で大きくなるだけで、その他の部位には広がっていきません。しかし、悪性腫瘍は全身に広がっていき、正常な臓器を破壊する能力を持っています。だから、死にいたる恐ろしい病気なのです。

悪性リンパ腫も例外ではなく、全身に広がり臓器障害を起こす病気です。特にリンパ腫はリンパ球という血液の細胞の病気です。血液は全身を巡っていますので、悪性リンパ腫の悪い細胞は発症時点から全身を巡っている(検査で見つけられるかどうか別として)と考えます。なので、悪性リンパ腫に対して手術で治療することはほとんどありません。

悪性リンパ腫ってどんな病気?

一口に悪性リンパ腫といっても、悪性リンパ腫にはたくさんの種類があります(およそ70種類以上)。種類が多すぎるため血液を専門としない医師もリンパ腫の種類をほとんど知らないほどです。そして、その種類によって治療法、再発の可能性などが変わっていきます。種類が多いため、「調べても自分の病気のことがよく分からなかった。」と話される患者さんも多いです。悪性リンパ腫と言われた際には必ず主治医に「どんな種類のリンパ腫ですか?」と聞いてみましょう。

ちなみに、リンパ腫の種類を確定させるためには「生検」という病気と考えられる組織の一部を切除して顕微鏡で詳しく調べる検査が必要になります。診断のために必須の検査ですので、医師から生検検査について説明された場合には受けるようにしてください。

悪性リンパ腫の治療はどうなるの?

主な治療は化学療法となります。化学療法とはいわゆる抗がん剤を用いた治療です。医療ドラマなどでネガティブなイメージを持たれている方も多いと思いますが、現代では吐き気に対するお薬もかなり良くなってきており、できる限り患者さんの負担を減らすように工夫がされています。日本人で最も多いリンパ腫の「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」というタイプのリンパ腫の場合は化学療法で約6割の方が5年間再発なく過ごすことができます。

ただし、先ほど述べたように、悪性リンパ腫の治療方法はリンパ腫の種類(タイプ)によって全く異なります。治療については主治医の先生にしっかりと確認しましょう。

今後、それぞれのリンパ腫の種類について、また治療についても解説していきたいと思います。

 

※この記事は日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドラインを参照して作られています。

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