急性リンパ性白血病 

こんにちは、内科医κです。

血液内科医として勤務する中で、患者さんや研修医の先生向けの血液の病気についての情報が不足していると感じており、少しでもお役に立てればと情報発信しています。

子供に多い白血病 急性リンパ性白血病とは?

急性白血病には大きく分けて「骨髄性」と「リンパ性」の二つのタイプがあります。リンパ性白血病は子供に多く、子供の白血病のほとんどは急性リンパ性白血病になります。大人と子供の急性リンパ性白血病では、病気の特徴や治療が少し異なります、私が内科医なので、主に大人の急性リンパ性白血病についてお話ししたいと思います。

どのような症状が出る?

白血病は血液を作る場所である骨髄で病気の白血病細胞が異常に増える病気です。そのため、正常な血液を作ることができず、貧血になったり血を止める血小板が減ってしまい血が止まらなくなったりします。

また、白血病の細胞が肝臓や脾臓で増えて、肝臓や脾臓が腫れてお腹が張って苦しくなる人もいます。

また、白血病の細胞ばかり増えて、体を守ってくれる正常な白血球はほとんどいなくなってしまうので、細菌が体を蝕んでしまう感染症にかかって命に関わることもあります。

どのような検査をする?

まず、血液検査で血液の細胞の数や種類を検査します。急性リンパ性白血病の場合、血液を顕微鏡で見ると白血病の細胞が見つかることが多いです。また、LDHという値が異常に上昇します。急性骨髄性白血病でも上昇しますが、急性リンパ性白血病の方がより異常値を示します。

血液検査で急性リンパ性白血病が疑わしいとなったら、「骨髄検査」を行います。骨髄検査で骨髄の中にリンパ球の性質を持つ白血病細胞が認められれば確定診断となります。

また、大人の急性リンパ性白血病ではBCR-ABL1という異常な融合遺伝子が見つかることがほとんどです。この融合遺伝子は9番目22番目の染色体(遺伝子を運ぶもの)が融合してできます。これを発見された地名からフィラデルフィア染色体と呼びます。フィラデルフィア染色体があるかどうかで治療方法が大きく変わります。そのため、血液や骨髄液でフィラデルフィア染色体(BCR-ABL1融合遺伝子)があるかどうかの検査(RT-PCR検査、FISH検査と呼ばれる検査です)を行います。フィラデルフィア染色体検査の結果が出るまでには1週間弱かかります。

どんな治療を受ける?

フィラデルフィア染色体、BCR-ABL1融合遺伝子があるか無いか(陽性か陰性か)で急性リンパ性白血病の治療は大きく違います。

フィラデルフィア染色体やBCR-ABL1融合遺伝子の検査結果が出るまでに1週間かかりますので、その間はステロイドと呼ばれるお薬だけを投与します。ステロイドだけでもある程度白血病の細胞を減らすことができます。ただし、ステロイドだけでは白血病を治すことはできませんので、フィラデルフィア染色体の検査結果がでたらすぐに次の治療に移ります。

フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病の初回治療では、BCR-ABL1融合遺伝子の働きを抑える「チロシンキナーゼ阻害薬」と呼ばれるお薬が治療の中心になります。初めて治療する時(これを初発時と呼びます)にはイマチニブというお薬しか使えませんが、再発時にはダサチニブとポナチニブというお薬も使えます。これらのお薬が使えなかった時代では、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病の方はほとんど治りませんでした。しかし、チロシンキナーゼ阻害薬が使えるようになって、劇的に治療成績が向上しました。通常はこのチロシンキナーゼ阻害薬に加えて、たくさんの種類の抗がん剤を組み合わせた治療(これを多剤併用化学療法と呼びます)を行います。

フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ性白血病では、チロシンキナーゼ阻害薬が使えませんので、多剤併用化学療法を行います。15-29歳(場合によっては39歳まで)の若い方では子供の急性リンパ性白血病の治療(大人よりたくさんの抗がん剤を投与する)と同じような治療を行った方が良いとされており、若年者と中年以降で治療内容が少し変わります。

多剤併用化学療法の患者さんが感じる副作用として、吐き気、下痢、強い倦怠感、髪の毛が抜ける、手足の痺れ、口が荒れるなどがあります。自分では感じられない副作用として、肝機能障害や腎機能障害、細菌感染症にかかるなどがあります。

チロシンキナーゼ阻害薬の副作用として、足が腫れる、息苦しくなる、発疹、下痢などがあります。特にポナチニブを使用する際には血の塊(血栓)ができやすいという副作用があり、動脈硬化が進んでいる患者さんには慎重に使用する必要があります。

急性リンパ性白血病の治療期間は非常に長く、副作用に注意しながら治療を続ける必要があります。主治医と相談しながら、治療を続けていきましょう。

 

※この記事は日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドラインを参照して作られています。

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