こんにちは、内科医Kappaです。
今回は、一般にはあまり知られていませんが、血液内科では比較的よく診療する病気の一つである、免疫性血小板減少症(ITP)についてお話ししたいと思います。
ITPは、免疫の異常によって血小板が減少する病気です。血小板は、出血を止めるために重要な働きをする血液中の小さな成分になります。そのため、血小板が著しく減少すると、出血しやすくなることがあります。
一方で、ITPの患者さんの中には、自覚症状がほとんどなく、健康診断などで偶然発見される方もいます。また、ITPと診断されても、必ずしもすぐに治療が必要になるわけではありません。
今回は、成人のITPについて、病気の特徴や治療の考え方をわかりやすく解説したいと思います。
免疫性血小板減少症(ITP)とは?
ITPは、自分自身の血小板に対して免疫が反応することで、血小板が通常より早く壊されたり、血小板が十分に作られなくなったりする病気です。
以前は「特発性血小板減少性紫斑病」と呼ばれていましたが、現在は「免疫性血小板減少症」という名称が使われています。
ITPは血小板が減少する病気ですが、白血病などの血液のがんとは異なる病気です。
どのような症状が出るの?
ITPでは血小板が減少するため、出血しやすくなることがあります。
代表的な症状としては、皮膚に小さな赤い点が現れる「点状出血」や、あざのような「紫斑」があります。また、鼻血や歯ぐきからの出血、月経量の増加などがみられることもあります。
血小板が著しく減少した場合には、消化管出血や脳出血などの重い出血が起こることもあります。ただし、こうした重い出血がすべての患者さんに起こるわけではありません。
一方で、血小板が減少していても、出血症状がほとんどない患者さんもいます。そのため、健康診断やほかの病気の検査で、偶然血小板の減少が見つかることもあります。
どのように診断するの?
ITPの診断では、まず血液検査で血小板数を確認します。
一般的に、血小板数が10万/μL未満で、ITPに合致する検査所見があり、ほかの血小板減少の原因が除外される場合にITPと診断します。
血小板が減少する原因はITP以外にも多くあります。そのため、薬剤の影響、肝臓の病気、ほかの血液疾患などがないかを確認することが重要です。
必要に応じて追加の血液検査や骨髄検査を行うこともありますが、すべての患者さんに骨髄検査が必要になるわけではありません。
ITPと診断されたら、すぐに治療が必要なの?
ITPと診断されても、すべての患者さんに治療が必要になるわけではありません。
治療の必要性は、主に血小板数と出血症状によって判断します。
一方で、血小板数が著しく減少している場合や、出血症状がある場合には、治療が必要になることがあります。また、年齢、ほかの病気の有無、服用している薬剤、手術などの予定も考慮して治療方針を決めます。
そして、ITPの治療で大切なのは、必ずしも血小板数を正常値に戻すことではなく、出血を予防し、安全に日常生活を送れるようにすることです。
そのため、患者さんの状態に応じて、出血の危険性を十分に低くできる血小板数を維持することを目標にします。
私の患者さんにも、血小板数が低いことに不安を感じる方は少なくありません。そのようなときには、「成人のITPは長く付き合っていくこともある病気です。お薬には副作用もあるので、血小板数を正常値に戻すことよりも、出血を防ぎ、安心して日常生活を送れる状態を維持することが大切ですよ」とお伝えしています。
血小板数がある程度保たれており出血傾向がない場合には、治療を行わずに経過観察することも、ITPでは大切な診療方針の一つです。ただし、血小板数が変化することもあるため、定期的に診察や血液検査を受けながら経過を確認していきます。
どのような治療があるの?
ITPの治療には、いくつかの方法があります。
日本では、ピロリ菌に感染している患者さんでは、まず除菌治療を検討します。ピロリ菌の感染が免疫反応を介して血小板の減少に関わっていると考えられており、除菌治療によって血小板数が改善する場合があります。
また、血小板数を増やすための治療として、以前から副腎皮質ステロイドが広く使用されてきました。
ステロイドは有効な治療薬ですが、長期間使用すると、感染症、糖尿病、骨粗しょう症など、さまざまな副作用が問題になっていきます。
近年は、血小板の産生を促すTPO受容体作動薬や、免疫の働きに作用する薬剤など、さまざまな治療薬が使用できるようになっています。この10年くらいで一気に使えるお薬が増えました。
そのため、ステロイドを長期間使い続けることをできるだけ避け、必要に応じてほかの治療薬を使用することが近年、重視されるようになっています。私自身もステロイドの長期的な副作用を避けるように患者さんに応じて工夫して治療を組み立てています。
どの治療法が適しているかは、年齢、病状やこれまでの治療経過、副作用などを考慮して総合的に判断します。
日常生活で気をつけることは?
ITPと診断されても、必ずしも日常生活を大きく制限する必要はありません。
ただし、血小板数が著しく減少している場合には、けがや出血につながる活動に注意が必要です。どの程度の活動が可能かは血小板数や出血症状によって異なるため、担当医と相談するとよいでしょう。
また、血小板の働きや血液の固まりやすさに影響する薬剤を使用している場合には、担当医に伝えることが大切です。自己判断で薬を中止せず、必要性について相談しましょう。
鼻血が止まらない、血便や黒色便が出るなどの症状がある場合には、速やかに医療機関を受診する必要があります。突然の激しい頭痛や意識の異常などが現れた場合には、緊急の受診が必要です。
ITPは長期間の経過観察が必要になることもありますが、病状に応じて治療を選択しながら、日常生活を送ることができます。
まとめ
ITPは、免疫の異常によって血小板が減少する病気です。
健康診断などで偶然発見されることもあり、診断されたからといって必ずしもすぐに治療が必要になるわけではありません。
治療の必要性は血小板数や出血症状などから判断し、治療を行わない場合にも定期的な検査が大切です。
また、近年は治療薬の選択肢が増えており、ステロイドの長期使用をできるだけ避けながら治療を行うことが重視されています。
ITPの治療では、血小板数を正常値に戻すことだけでなく、出血を防ぎ、安心して日常生活を送れることが大切です。
病状や適切な治療は患者さんによって異なりますので、主治医と相談しながら経過をみていきましょう。
参考文献
- 柏木浩和ほか.成人免疫性血小板減少症診断参照ガイド2023年版.臨床血液.2023;64:1245–1257.
- 厚生労働省難治性疾患政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班.成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド 2019改訂版.
- Cuker A, et al. American Society of Hematology 2026 guidelines for immune thrombocytopenia: initial and second-line therapy for adults with primary ITP.
- Neunert C, et al. American Society of Hematology 2019 guidelines for immune thrombocytopenia. Blood Advances. 2019;3:3829–3866.
※この記事は免疫性血小板減少症について一般的な情報を説明したものです。実際の治療内容や副作用への対応は、患者さんの病状や体調によって異なります。個別の治療方針については、担当の医師にご相談ください。
