こんにちは、内科医κです。
今日は医学生さん、研修医の先生向けに、血小板減少についてお話ししたいと思います。
日常診療でCBC(全血算)を確認していると、白血球数の異常や貧血には比較的よく遭遇します。一方、血小板減少を見つけると、少し身構えてしまう先生もいるのではないでしょうか。
血小板減少の原因はさまざまで、経過観察でよい場合もあれば、急いで対応しなければならない場合もあります。今回も、すべての血小板減少を自分で診断する必要はありません。まず緊急性を判断し、代表的な原因を確認したうえで、必要に応じて血液内科に相談することを目標にしてみましょう。
まずは急ぐ血小板減少かどうかを判断!
血小板減少を見つけたら、最初に確認したいのは出血症状と血小板数、そして血小板減少の進行速度です。
鼻血や歯肉出血が止まらない、皮膚に紫斑がある、血尿や血便が出ているなど、出血症状がないか確認しましょう。特に、止血が難しい出血や消化管出血、頭蓋内出血を疑う症状がある場合には、緊急の対応が必要です。
血小板数も重要です。血小板数が2万/μL未満の場合には、出血症状がなくても早急な評価が必要です。ただし、血小板数だけで入院の必要性が決まるわけではありません。
また、血小板減少の進行速度にも注目しましょう。以前から血小板数が5万/μL程度で安定している患者さんと、数日前まで正常だった血小板数が急に4万/μLまで低下した患者さんでは、対応が異なります。
「どこまで減っているか」だけでなく、「どのくらいの速さで減っているか」も重要なポイントです。
本当に血小板が減っている? 偽性血小板減少を確認
血小板減少を見つけたときに、ぜひ知っておいてほしいのが「偽性血小板減少」です。
これは、実際には血小板が十分にあるにもかかわらず、検査上、血小板数が少なく測定されてしまう現象です。代表的な原因が、EDTA依存性偽性血小板減少です。
通常、血算の採血管には血液が固まらないようにEDTAという物質が入っています。しかし、一部の患者さんではEDTAの影響で血小板が凝集し、検査機器が血小板を正確に数えられなくなることがあります。
この場合には、末梢血塗抹標本を顕微鏡で確認すると、血小板が固まっている様子が観察されます。検査室に相談し、必要に応じて別の抗凝固剤を使用して再検査しましょう。
ただし、出血症状がないからといって、偽性血小板減少と決めつけてはいけません。 実際に血小板が減少していても、出血症状がない患者さんはいます。
血小板だけの異常? それともほかの血球も減っている?
次に確認したいのが、血小板だけが減っているのか、それとも赤血球や白血球にも異常があるのかという点です。
血小板だけが減少している場合には、免疫性血小板減少症(ITP)や薬剤性血小板減少、肝疾患などが鑑別に挙がります。
一方、貧血や白血球減少も伴っている場合には、骨髄異形成症候群(MDS)や再生不良性貧血、白血病など、骨髄で血液を作る機能に問題がある病気も考える必要があります。
ただし、血小板減少と貧血が同時に見られる場合には、血栓性微小血管症(TMA)を忘れてはいけません。
TMAは、細い血管の中で血栓が形成され、血小板が消費されるとともに、赤血球が壊されてしまう病態です。血液検査ではLDHや間接ビリルビンの上昇、ハプトグロビンの低下などが見られ、末梢血塗抹標本では破砕赤血球が観察されることがあります。
特に、TMAの一つである血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は緊急性が高く、速やかな治療が必要です。
そのため、血小板減少に貧血を伴い、溶血が疑われる場合には、早急に血液内科へ相談しましょう。
血小板減少の代表的な原因を確認しましょう
ここからは、日常診療で確認しておきたい血小板減少の原因を紹介します。
① 肝疾患や脾腫はないか?
肝硬変などの慢性肝疾患では、血小板数が低下することがあります。
主な理由は、門脈圧亢進によって脾臓が大きくなり、血小板が脾臓に多く取り込まれることと、肝臓で作られるトロンボポエチン(TPO)が減少することです。
TPOは、骨髄で血小板を作るように働きかけるホルモンです。肝疾患による血小板減少では比較的軽度の血小板減少が見られることが多いですが、進行した肝硬変では高度の血小板減少を認めることもあります。
肝機能検査や画像検査で、肝疾患や脾腫の有無を確認しましょう。
② 凝固異常はないか?
血小板減少の重要な鑑別疾患に、播種性血管内凝固症候群(DIC)があります。
DICは、重症感染症や悪性腫瘍などを背景に、全身の血管内で凝固反応が過剰に活性化し、血小板や凝固因子が消費される病態です。
血小板減少を見つけた場合には、必要に応じてPT、APTT、フィブリノゲン、FDP、Dダイマーなどを確認しましょう。特に、急速な血小板減少に凝固異常を伴う場合には、早急な対応が必要です。
③ 新しく開始した薬剤はないか?
血小板減少の原因として、薬剤も忘れてはいけません。
抗菌薬や抗てんかん薬など、さまざまな薬剤によって血小板減少が起こることがあります。そのため、最近開始・変更された薬剤がないかを確認しましょう。
特に注意したいのが、**ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)**です。
HITは、ヘパリンの投与によって血小板が減少する病気ですが、出血よりも血栓症が問題となります。典型的にはヘパリン投与開始から5〜10日程度で血小板が減少しますが、過去のヘパリン投与歴によっては、より早く発症することもあります。
また、血小板数が正常範囲内であっても、投与前から大きく低下している場合にはHITを疑う必要があります。
ヘパリン投与中の患者さんで血小板数が急に減少した場合には、HITを鑑別に挙げ、速やかに専門家へ相談しましょう。
原因がはっきりしなければ、血液内科へ相談!
ここまで確認しても血小板減少の原因がはっきりしない場合には、血液内科へ相談しましょう。
特に、血小板だけが減少している場合には、免疫性血小板減少症(ITP)などの病気も考えます。ITPは、免疫の異常によって血小板が壊されやすくなったり、十分に作られなくなったりする病気です。
ただし、ITPの診断には、薬剤や肝疾患など、ほかの血小板減少の原因を除外することが重要になります。
まとめ:血小板減少を見たら、まずはこの3つ!
血小板減少を見つけたときには、次の3つを意識してみましょう。
① 急ぐ血小板減少かどうかを判断する
出血症状、血小板数、低下のスピードを確認しましょう。急速な血小板減少や重度の血小板減少では、早急な対応が必要です。
② 本当に血小板が減っているのか、ほかの血球にも異常があるのかを確認する
偽性血小板減少を除外し、貧血や白血球異常を伴っていないか確認しましょう。特に、貧血と血小板減少を認める場合には、TMAを忘れないことが重要です。
③ よくある原因を確認し、わからなければ血液内科に相談する
肝疾患、DIC、薬剤性などを確認しましょう。原因がはっきりしない場合には、無理に自分だけで診断しようとせず、血液内科に相談してよいと思います。
血小板減少は、貧血や白血球数の異常に比べると、少し難しく感じるかもしれません。しかし、最初に緊急性を判断し、順番に原因を考えていけば、対応を整理することができます。
ここまでできれば、かなり頼もしい研修医の先生です!