こんにちは、内科医κです。
今回は、研修医の先生にぜひ知っておいてほしい「輸血」についてお話ししたいと思います。
輸血は多くの診療科で行われる治療ですが、意外と体系的に勉強する機会が少ない分野ではないでしょうか。
今は違うかもしれませんが、私は医学生のときに輸血についてほとんど学ぶ機会がなく、研修医になった途端に輸血をオーダーすることになり、とても焦ったことを覚えています。
そのときは「医者になってこんなに使うなら、医学生のときにもっと教えておいてくれよ……」と思ったものです(笑)。
今回は、そんな研修医の先生に向けて、輸血の基本的な考え方を整理してみたいと思います。
輸血には大きく2つの考え方がある
私は医師3年目に1年間麻酔科で勤務していたこともあり、手術中の大量出血に対する輸血も経験しました。
その経験から、輸血には大きく分けて2つの考え方があると思っています。
一つは、大量出血に対して失われた血液成分を補充する「救急・外科的な輸血」。もう一つは、貧血や血小板減少などに対して不足している血液成分を補充する「内科的な輸血」です。
もちろん、実際には両者が明確に分かれるわけではありませんが、この2つを区別すると輸血の考え方が整理しやすくなると思います。
① 救急・外科的な輸血
交通事故や手術中の大量出血など、急激に血液が失われる状況で行う輸血です。
この場合、赤血球だけでなく、血漿や血小板も同時に失われるため、赤血球輸血に加えて新鮮凍結血漿(FFP)や血小板製剤(PC)を組み合わせた輸血が必要になることがあります。大量出血に対する輸血では、酸素運搬能や止血機能の維持に加えて、循環血液量を回復させる役割もあります。
また、急性大量出血では、出血直後のHbが必ずしも低下しているとは限りません。そのため、大量出血が疑われる患者さんでは、Hbの値だけで輸血の必要性を判断してはいけません。
循環動態や出血の程度を評価し、必要に応じて速やかに輸血を開始するとともに、出血源のコントロールを行うことが重要です。
② 内科的な輸血
一方、血液内科などでは、骨髄抑制による貧血や血小板減少に対して輸血を行うことがあります。
こちらは、失われた血液を補うというよりも、不足している血液成分を補充することが目的です。
例えば、貧血に対しては赤血球輸血、血小板減少に対しては血小板輸血を検討します。ただし、検査値が低いからといって、必ず輸血が必要になるわけではありません。
輸血の目的は検査値を正常にすることではなく、患者さんに必要な血液成分を補充することです。
そのため、患者さんの症状や出血リスク、基礎疾患などを考慮しながら、輸血の必要性を判断します。
どの血液製剤を使えばよい?
輸血で使用する代表的な血液製剤には、赤血球製剤、血小板製剤、新鮮凍結血漿(FFP)があります。
それぞれの役割を簡単に整理してみましょう。
| 血液製剤 | 主な目的 | 使用する状況の例 |
| 赤血球製剤(RBC) | 酸素運搬能の改善 | |
| 血小板製剤(PC) | 血小板の補充 | 血小板減少による出血、出血予防 |
| 新鮮凍結血漿(FFP) | 凝固因子の補充 | 凝固因子欠乏による出血、大量出血に伴う凝固障害 |
ここで大切なのは、何が不足していて、何を補充したいのかを考えることです。
例えば、貧血の患者さんにFFPを投与しても、酸素運搬能は改善しません。また、血小板減少に対して赤血球を輸血しても、血小板数は増えません。
当たり前のようですが、輸血をオーダーするときには、この基本に立ち返ることが大切だと思います。
なお、各製剤の具体的な輸血基準については、次回以降の記事で詳しく解説します。
輸血は必要な量を、必要なときに
最後にもう一つ、覚えておいてほしいことがあります。
それは、輸血は必要最小限にとどめることが基本だということです。
輸血は患者さんの命を救う重要な治療ですが、アレルギー反応や輸血関連循環過負荷(TACO)などの副反応を起こす可能性があります。また、繰り返し赤血球輸血を受ける患者さんでは、鉄過剰症などの問題も生じます。
そのため、検査値を正常にすることを目指すのではなく、患者さんの状態に応じて必要な輸血量を判断することが重要です。
輸血をオーダーするときには、**「何を目的に、どの製剤を、どれくらい投与するのか」**を考えてみてください。
今回は輸血の基本的な考え方についてお話ししました。
次回は、赤血球輸血について詳しく解説します。特に「Hb 7 g/dL」という数字がどこから来たのか、なぜ制限的輸血戦略が推奨されるようになったのかを、一緒に考えてみたいと思います。
それでは、また次回!

