Pola-R-CHP(PR-CHP)療法について

こんにちは、内科医Kappaです。

今回は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に使用される「Pola-R-CHP療法」についてお話ししたいと思います(PR-CHP療法とも呼ばれますが、この記事ではPola-R-CHP療法と表記します)。

DLBCLの治療には、長年にわたってR-CHOP療法という治療法が使用されてきました。しかし、近年では新しいお薬を組み合わせたPola-R-CHP療法が登場し、2022年には日本国内でも初めて治療を受けるDLBCLの患者さんに使用できるようになりました。

今回は、Pola-R-CHP療法がどのような治療なのか、従来のR-CHOP療法と何が違うのか、治療の効果や副作用について、できるだけわかりやすく説明したいと思います。

Pola-R-CHP療法とは?

Pola-R-CHP療法は、主に初めて治療を受けるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の患者さんに使用される治療法です。

DLBCLは悪性リンパ腫の中でも患者さんの数が多い病気で、詳しくはこちらの記事で解説しています。

Pola-R-CHP療法は、次の5種類のお薬を組み合わせた治療です。

  • ポラツズマブ ベドチン(商品名:ポライビー)
  • リツキシマブ(商品名:リツキサン)
  • シクロホスファミド(商品名:エンドキサン)
  • ドキソルビシン(商品名:アドリアシン)
  • プレドニゾロン(商品名:プレドニン)

従来のR-CHOP療法との大きな違いは、ビンクリスチンという抗がん剤の代わりに、ポラツズマブ ベドチンというお薬を使用することです。それ以外の4種類のお薬は、R-CHOP療法と共通しています。

Pola-R-CHP療法では、それぞれ異なる仕組みで働くお薬を組み合わせることで、リンパ腫の細胞を攻撃します。

新しいお薬「ポラツズマブ ベドチン」とは?

ポラツズマブ ベドチンは、「抗体薬物複合体(ADC)」という比較的新しいタイプのお薬です。少し難しい名前ですが、簡単に説明すると、リンパ腫の細胞を見つけるための抗体に、抗がん剤を結びつけたお薬です。

ポラツズマブ ベドチンの抗体は、B細胞の表面にある「CD79b」というタンパク質を標的としています。抗体がCD79bに結合すると、お薬が細胞の中に取り込まれ、結びついていた抗がん剤が細胞の中で働きます。

この抗がん剤は、細胞が分裂するときに必要な仕組みを妨げることで、リンパ腫の細胞を攻撃します。このように、特定の細胞を標的として抗がん剤を届けることが、抗体薬物複合体の特徴です。

ただし、CD79bは正常なB細胞にも存在するため、リンパ腫の細胞だけでなく正常なB細胞も攻撃してしまいます。また、抗がん剤による副作用がなくなるわけでもありません。

なぜビンクリスチンを使用しないの?

R-CHOP療法に含まれるビンクリスチンも、細胞分裂を妨げることで効果を発揮する抗がん剤です。

ポラツズマブ ベドチンに結びついている抗がん剤も、ビンクリスチンと似た仕組みで働きます。そのため、Pola-R-CHP療法ではビンクリスチンを併用せず、ポラツズマブ ベドチンに置き換えています。

なお、ポラツズマブ ベドチンでも手足のしびれなどの神経障害が起こることがありますので、注意が必要です。

Pola-R-CHP療法の治療スケジュール

Pola-R-CHP療法では、通常、R-CHOP療法と同じように21日間を1サイクルとして治療を繰り返します。

基本的には、最初の1日または2日間に点滴を行い、プレドニゾロンというステロイド薬を5日間内服します。

DLBCLに対する代表的な治療スケジュールでは、Pola-R-CHP療法を6サイクル行い、その後にリツキシマブのみを2サイクル追加します。この場合、治療期間は約5〜6か月になります。

ただし、実際の治療スケジュールは患者さんの病状や体調によって異なります。最初は入院して治療を行い、その後は外来で治療を継続する場合もあります。

どのような患者さんがPola-R-CHP療法の対象になるの?

Pola-R-CHP療法は、主に初めて治療を受けるDLBCLの患者さんに使用されます。

日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドラインでは、初めて治療を受けるDLBCLの患者さんに対して、R-CHOP療法やPola-R-CHP療法などが推奨されています。

ただし、病気の広がり方や患者さんの状態によって、適した治療法は異なります。そのため、担当の医師が患者さん一人ひとりの状態を考慮して、治療法を選択します。

また、心臓の働きや、もともとの手足のしびれなどによっても、使用できるお薬が変わることがあります。

Pola-R-CHP療法の主な副作用

Pola-R-CHP療法では、R-CHOP療法と共通するお薬を多く使用するため、副作用にも共通する部分が多くあります。

代表的な副作用として、白血球や好中球の減少、感染症、吐き気、下痢、脱毛、手足のしびれなどがあります。

ここでは、特に注意していただきたい副作用について説明します。

白血球や好中球の減少

Pola-R-CHP療法では、抗がん剤の影響によって骨髄の働きが低下し、白血球などの血液細胞が減少することがあります。

特に重要なのが、白血球の一種である「好中球」の減少です。好中球は細菌などから体を守る役割を持っているため、好中球が減少すると感染症にかかりやすくなります。好中球が少ない時期に感染症を起こした場合には重症化しやすいため、注意が必要です。

Pola-R-CHP療法では、好中球の減少による感染症のリスクを下げるために、G-CSFという好中球を増やすお薬を予防的に使用することが一般的です。

治療中の発熱

治療中に特に注意していただきたい症状が発熱です。

好中球が減少している時期に発熱した場合には、速やかな対応が必要になることがあります。そのため、治療中に発熱した場合には、自己判断で様子を見ず、医療機関に速やかに連絡することが望ましいです。

何度以上の発熱で連絡するか、夜間や休日にはどこへ連絡するかについて、あらかじめ担当の先生と確認しておくことが大切です。

また、発熱がなくても、強い寒気、息苦しさ、ぐったりするなどの症状がある場合には、速やかに医療機関へ連絡することが望ましいです。

手足のしびれ(末梢神経障害)

ポラツズマブ ベドチンでは、手足のしびれなどの神経障害が起こることがあります。

指先がしびれる、細かい作業がしにくい、歩きにくいといった症状が出る場合があります。このような症状が強くなった場合には、お薬の量を減らしたり、投与を中止したりすることがあります。

神経障害は回復までに時間がかかることがあり、治療終了後も症状が残る場合があります。そのため、症状が軽いうちから主治医に伝えることが大切です。

そのほかの副作用

Pola-R-CHP療法では、吐き気、下痢、便秘、脱毛、倦怠感なども起こることがあります。

また、リツキシマブによる点滴中のアレルギーに似た反応や、B型肝炎ウイルスの再活性化にも注意が必要です。

ドキソルビシンによる心臓への影響や、プレドニゾロンによる血糖値の上昇、不眠なども、R-CHOP療法と同様に注意する必要があります。

これらの副作用については、R-CHOP療法の記事でも詳しく解説しています。

まとめ:Pola-R-CHP療法はDLBCLの新しい治療選択肢

Pola-R-CHP療法は、従来のR-CHOP療法のビンクリスチンをポラツズマブ ベドチンに置き換えた治療法です。

臨床試験では、R-CHOP療法と比較して、病気の進行や再発などを抑える効果が改善することが示されています。

Pola-R-CHP療法もR-CHOP療法と同様に、DLBCLの治癒を目指して行う治療法です。

治療期間は数か月に及びますが、副作用を予防したり、症状に応じてお薬を調整したりしながら治療を進めることができます。

治療中に気になることがあれば、担当の医師や看護師に相談してみてください。


参考文献

  1. 日本血液学会.造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版.
  2. Tilly H, et al. Polatuzumab Vedotin in Previously Untreated Diffuse Large B-Cell Lymphoma. N Engl J Med.2022;386:351–363.

※この記事はPola-R-CHP療法について一般的な情報を説明したものです。実際の治療内容や副作用への対応は、患者さんの病状や体調によって異なります。個別の治療方針については、担当の医師にご相談ください。

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