血液内科医になるつもりはなかった話

こんにちは、内科医Kappaです。

現在、私は血液内科医として働いていますが、実は最初から血液内科医になろうと思っていたわけではありません。もともとは小児科医になりたくて医学部に入りました。

そこからいろいろな経験を経て、現在の血液内科にたどり着きました。振り返ってみると、ずいぶん遠回りをしたように思います。

今回は、そんな私の進路選択について、少し昔話をしてみたいと思います。

もともとは小児科医になりたかった

私は医学部に入る前から、小児科医になりたいと思っていました。特に、白血病などの病気で苦しむ子供たちを助けたいという思いがあり、将来は小児血液の分野に進みたいと考えていました。

医学部に入ってからもその気持ちは変わらず、小児血液の教室を訪問したり、初期研修先も将来その病院の小児科で専門研修をすることを考えて選びました。

当時は、自分が小児科以外の診療科に進むとは、ほとんど考えていませんでした。

学生時代に出会った血液内科

医学部在学中に、数か月間研究を体験する授業がありました。

その研修先を選ぶために、学内の研究室のプレゼンテーションを聞く機会がありました。その中で、血液内科の先生がGVL(移植片対白血病効果)とGVHD(移植片対宿主病)について研究されている話を聞きました。

私は医学部に入る前から、医学の中でも特に免疫に興味がありました。そんな私にとって、「免疫の力で白血病を倒す」という話は衝撃的でした。

免疫って、そんなことまでできるのか!

すっかり興味を持ってしまい、すぐにその先生に連絡して、血液内科の研究室で研究を体験させていただくことになりました。

この経験をきっかけに、血液内科の先生方にも私の存在を知っていただくことになりました。卒業が近づく頃には、ぜひ血液内科へ、と熱心に誘っていただきました。ただ、私には小児科医になるという目標がありました。せっかくのお誘いでしたが、そのときは丁重にお断りしました。

もっとも、医学部で勉強する中で、小児科学よりも内科学の方が面白いな、と漠然と感じ始めていたのも事実です。

小児科医にはなれないと思った

その後、初期研修医になり、2年目の後半から本格的な小児科研修が始まりました。いよいよ念願の小児科です。

ところが、実際に研修をしてみると、自分には小児科医を続けることが難しいのではないかと感じるようになりました。

一番大きかったのは、病気で苦しむ子供たちを見ることが、想像以上につらかったことです。

もちろん、多くの子供たちは治療によって元気になっていきます。しかし、全力を尽くしても助けられない子供も、わずかながらいます。そうした子供たちを目の前にすると、私はとてもつらく感じました。これから何度も同じような経験をすることを考えると、自分には続けられないのではないかと思ったのです。

また、検査や処置をするときにも、大人の患者さん以上にかわいそうだと感じてしまい、躊躇してしまうことがありました。

もちろん、小児科医の先生方も同じようにつらい思いをされていると思います。その中でも、子供たちのために必要な医療を提供されている小児科の先生方には、いつも本当に頭が下がります。

ただ、当時の私には、それを続けていく自信がありませんでした。

小児科医になるために医学部に入ったのに、小児科医にはなれそうにない。

では、これからどうしようか。

初期研修の終わりに、進路がすっかりわからなくなってしまいました。しかも、このときすでに研修医2年目の1月でした(笑)。

麻酔科を経て、内科へ

小児科医になることに挫折したものの、次にどの診療科へ進めばよいのか、すっかりわからなくなってしまいました。そんなとき、仲良くしていただいていた麻酔科の先生から声をかけていただき、麻酔科で働くことになりました。

実際に麻酔科の仕事はとても面白く、生理学や薬理学の知識が日々の診療に直結することに魅力を感じました。学生時代にはあまり好きではなかった生理学も、この頃から面白いと思うようになりました。

ただ、麻酔科で働いているうちに、自分は患者さんと話をしながら、一緒に病気の治療に取り組んでいく医師になりたかったのだと気づいていきました。

麻酔科はとても魅力的な診療科でしたが、自分が思い描いていた医師像とは少し違っていたのです。

再び進路に悩んでいたところ、ある内科の先生に相談したことをきっかけに、学生時代に研究室でお世話になった血液内科の先生から連絡をいただきました。

「内科をやってみないか?」

すでに医師になって数年が経っており、今から内科に転向することには不安もありました。しかし、先生方から「遅れても大丈夫、しっかりサポートするから」と声をかけていただき、内科医として再出発することを決めました。

もっとも、この時点ではまだ血液内科医になるつもりはなく、将来は呼吸器内科に進むのかな、と漠然と考えていました。

やっぱり血液内科は面白い

実は、医師になってからの数年間、私は一度も血液内科を研修していませんでした。学生時代に研究室でお世話になったものの、臨床の血液内科の現場がどのようなものなのか、ほとんど知らなかったのです。

そこで、内科に転向した際、まず血液内科の先生の下で研修をすることにしました。

実際に血液内科の診療を経験してみると、やはり面白い。もともと小児血液に興味があったこともあり、血液疾患の病態や治療を考えることが、自分に合っていると感じるようになりました。

そんなとき、当時の上司が別の血液内科の先生に相談してくださり、翌年は血液内科の診療経験を豊富に積める病院で研修してはどうか、という話をいただきました。

その時点では、血液内科医になると完全に決めていたわけではありません。ただ、そのような研修を受けられる機会は、今後の人生でももうないだろうと思い、お誘いを受けることにしました。

振り返ると、このときに血液内科医になることが決まったように思います。

そして、血液内科の洗礼を受ける

内科に転向した最初の病院では、血液内科の患者さんがそれほど多くなく、一般内科と血液内科の両方を診療していました。

ところが、翌年に血液内科の診療経験を豊富に積める病院へ移ると、状況は一変しました。当然ですが、周りは血液疾患の患者さんばかりです。

そして、勉強しなければならないことが、あまりにも多い。

正直なところ、当時の記憶があまり残っていないほど大変でした(笑)。

それでも、その環境で多くの患者さんを診療し、先生方から指導を受ける中で、少しずつ内科医としての力が身についていったように思います。

他の先生方より遅れて内科の研修を始めた私でしたが、この経験を通じて、内科医として大きく成長できたように思います。

進路は、途中で変えても良い

こうして振り返ると、私の進路はずいぶん遠回りだったように思います。

小児科医になりたくて医学部に入り、麻酔科医になろうと思った時期もあり、内科に転向してからも、最初は呼吸器内科に進むのかなと考えていました。それが、今では血液内科医として働いています。

私がこの経験から感じていることは、主に3つあります。

まず、自分で決めた進路でも、途中で変えて良いということです。一度決めた進路を変えることには、もちろん不安もありました。ただ、無理に最初の目標にこだわらなくても良かったのだと、今では思っています。

次に、実際にやってみないとわからないことがあるということです。学生時代に思い描いていた診療科のイメージと、実際に働いてみたときの感覚は、必ずしも同じではありません。興味があることと、自分がその仕事を長く続けられるかどうかも、少し違うのかもしれません。

そして最後に、人との出会いが、新しい未来やチャンスにつながるということです。

振り返ると、私は本当に人との出会いに恵まれていたと思います。学生時代に研究室で指導してくださった先生、麻酔科に誘ってくださった先生、内科への転向を支えてくださった先生、血液内科での研修の機会を作ってくださった先生。多くの先生方に助けていただいたからこそ、今の自分があるのだと思います。

人との出会いには偶然の要素も大きいと思います。しかし、そのときに生まれたつながりを大切にすることで、思いがけない機会につながることもあるのかもしれません。

学生時代に出会った先生とのつながりが、数年後に自分の進路を変えるきっかけになるとは、当時は想像もしていませんでした。だからこそ、これからも一つひとつの出会いを大切にしていきたいと思っています。

私自身、ずいぶん遠回りをしましたが、その途中で経験したことは決して無駄ではありませんでした。特に麻酔科で学んだ生理学や全身管理の知識は、今でも私の診療を支えてくれています。

そして何より、いろいろな道を通って、結局は医学部に入る前から興味を持っていた血液疾患の診療に戻ってきたのですから、人生はなかなか面白いものだなと思います。

進路に悩んでも良いと思います。私のように一度やってみて、思い描いていたものと違えば変えても良い。この記事が、皆さんの次の一歩を踏み出す手助けになれば嬉しいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA