こんにちは、内科医Kappaです。
今回は、輸血の副反応についてお話ししたいと思います。
輸血は日常診療でよく行われる治療ですが、さまざまな副反応を起こす可能性があります。
私は初期研修医の頃に「輸血中の患者さんが発熱しています」と連絡を受けて、かなり焦った記憶があります。
今回は、その頃の自分に向けて、輸血中の副反応への対応について簡単にまとめてみたいと思います。
輸血中に異常が起きたら、まず輸血を止める
輸血中に発熱、悪寒、呼吸困難、血圧低下などの症状が出現した場合には、まず輸血を中止することが重要です。
対応している看護師さんに輸血を止めてもらい、必ずベッドサイドに赴いて患者さんのバイタルサインや症状を確認し、必要な初期対応を行います。
低血圧がある場合には、輸血ルートとは別に静脈路を確保し、循環動態に応じて輸液などのショック対応が必要になります。ただし、呼吸状態や循環過負荷の有無にも注意が必要です。
また、輸血製剤と患者さんの照合に間違いがないか確認し、輸血部門にも連絡します。重篤な副反応が疑われる場合には、輸血バッグや輸血セットを保管し、必要な検査を行います。
発熱は比較的よく見られる輸血の副反応です。そのため、輸血の経験が増えてくると「よくある発熱反応だろう」と考えて、解熱薬だけで対応してしまいがちです。
しかし、発熱は溶血性輸血反応や細菌汚染による敗血症など、重篤な副反応の初期症状である可能性もあります。
そのため、まずはベッドサイドで患者さんを診察し、本当に症状が発熱だけなのか、輸血製剤の外観に異常はないか、取り違えはないかを速やかに確認することが大切です。
特に、血圧低下、呼吸困難、腰背部痛、血色素尿などを伴う場合には、重篤な副反応を疑って迅速に対応する必要があります。
十分な評価をせずに、解熱薬だけで対応することは避けたいところです。
比較的よくある輸血副反応
比較的よく遭遇する輸血副反応には、発熱性非溶血性輸血反応やアレルギー反応があります。
発熱性非溶血性輸血反応では、輸血中または輸血後に発熱や悪寒が出現します。
ただし、前述のように溶血性輸血反応や細菌汚染などの重篤な原因を除外したうえで診断する必要があります。特に血小板製剤では細菌汚染にも注意が必要です。
輸血製剤の外観に問題がないか、輸血の取り違えがないかを確認し、症状や経過によっては溶血の検査や血液培養などを検討します。
また、蕁麻疹やかゆみなどのアレルギー反応も比較的よく見られます。
軽症の場合には抗ヒスタミン薬などで対応しますが、呼吸困難や血圧低下を伴う場合にはアナフィラキシーを疑い、速やかな対応が必要です。
アナフィラキシーでは、アドレナリンの筋肉内投与が第一選択です。
私も一度、強い喘鳴を伴う輸血中のアナフィラキシーに遭遇し、アドレナリン筋注を行った経験があります。頭ではわかっていても、実際に遭遇すると焦るものです。こういった場面に備えて、普段から頭の中で対応をシミュレーションしておくことが大切だと思います。
TRALIとTACOを知っておこう
輸血によって呼吸困難が出現した場合には、TRALIとTACOという2つの重要な副反応を考える必要があります。
どちらも急性の呼吸障害を起こしますが、病態が異なるため、治療方針も異なります。
TRALI:輸血関連急性肺障害
TRALI(Transfusion-Related Acute Lung Injury)は、輸血中または輸血後6時間以内に発症する急性の呼吸障害です。
肺の血管透過性が亢進することで、非心原性肺水腫を生じます。輸血製剤中の抗体が関与する場合がありますが、それ以外の機序も知られています。
呼吸困難や低酸素血症を呈し、胸部画像では両側性の陰影を認めます。
治療は酸素投与や呼吸管理などの支持療法が中心となります。
TACO:輸血関連循環過負荷
TACO(Transfusion-Associated Circulatory Overload)は、輸血による循環負荷によって肺水腫などを生じる副反応です。
高齢者や心不全、腎機能障害のある患者さんなどで注意が必要です。
輸血中から輸血後数時間以内に呼吸困難や低酸素血症を認め、国際的な診断基準では輸血後12時間以内の発症が対象となっています。
予防には、患者さんの状態に応じて輸血量や輸血速度を調整することが重要です(輸血速度が速いと心臓に負荷がかかりやすい)。
TACOでは、呼吸管理に加えて利尿薬が有効な場合があります。
TRALIとTACOはどう見分ける?
TRALIとTACOはどちらも輸血後に呼吸困難や低酸素血症を起こしますが、病態は異なります。
TRALIは肺血管透過性の亢進による肺水腫、TACOは循環過負荷による肺水腫です。
そのため、TACOでは高血圧や頸静脈怒張、体液過剰などの所見が手がかりになります。また、BNPやNT-proBNP、胸部X線画像、心エコーなども鑑別の参考になります。
ただし、実際には両者の鑑別が難しいこともあり、これらの所見だけで完全に区別できるわけではありません。
特にTACOでは利尿薬が有効な場合がありますが、TRALIでは必ずしも適切ではありません。
輸血中の呼吸困難に遭遇した際には、単に「輸血の副反応」と考えるだけではなく、どのような病態で呼吸障害が起きているのかを考えることが大切です。
まとめ
今回は輸血の副反応についてまとめてみました。
輸血中に異常が起きた場合には、まず輸血を中止し、ベッドサイドで患者さんの状態を評価することが重要です。
発熱や蕁麻疹などの比較的軽症に見える副反応でも、重篤な副反応の初期症状である可能性があります。最初から「よくある副反応だろう」と決めつけずに対応したいところです。
また、呼吸困難が出現した場合には、TRALIやTACOなどを鑑別に挙げ、それぞれの病態を理解しておくことが大切です。
副反応は頻繁に遭遇するものではないかもしれませんが、いざというときに慌てないよう、対応を頭の中でシミュレーションしておくことをおすすめします。
次回は、輸血前に行う検査についてお話ししたいと思います。
参考文献・参考資料
- 日本輸血・細胞治療学会ガイドライン委員会.輸血療法実践ガイド.日本輸血細胞治療学会誌.2026;72(3):521–570.
- 日本赤十字社.輸血の副作用:TRALI / TACO.
- International Society of Blood Transfusion (ISBT). Transfusion-associated circulatory overload (TACO): revised international surveillance case definition.
※本記事は上記資料を参考に執筆した個人の解説です。実際の輸血副反応への対応は、患者さんの状態や施設の診療体制、各施設の対応手順などに基づいて判断してください。
