こんにちは、内科医Kappaです。
血液内科の日々の診療では、血液培養を採取する機会が非常に多くあります。
特に、強い化学療法や造血幹細胞移植を受けた患者さんでは、血液培養を何度も採取することもあります。そのため、看護師さんから「また血液培養ですか?」と聞かれることも少なくありません。
血液培養は患者さんの負担になるだけでなく、採血を担当する看護師さんにとっても大変な検査だと思います。特に血管確保が難しい患者さんでは、私も一緒に血管を探したりして、どうにか採取できるように努めることもあります(最終的に鼠径部から採取する場合が多いですが・・・)。
今回は、血液内科医がどのようなことを考えて血液培養をオーダーしているのか、看護師さんと一緒に考えてみたいと思います。
血液内科では、どうして血液培養が多いの?

血液内科の先生って、血液培養のオーダーをたくさん出しますよね。感染症が心配なのはなんとなくわかるんですが、それにしても多いなと感じることがあって……。

確かに・・・。血液内科では血液培養を採取する機会が多いですよね。2セット必要なので通常の採血よりも大変ですし。

そうなんです。患者さんの負担もありますし、こんなに採る必要があるのかな、と思うこともあるんです。

おっしゃる通り、血液培養は多く採ればよいというものではないと思います。ただ、血液内科では特に重要な検査でもあるんです。どうして血液培養を採る機会が多いのか、一緒に考えてみましょうか。
血液内科は感染症との戦い
血液内科の患者さんでは、元々の疾患や化学療法によって好中球が減少し、感染症にかかりやすくなることがあります。
特に高度の好中球減少がある場合には、感染症があっても局所の炎症所見が乏しく、原因となる場所がわからないこともあります。また、感染症が重症化するリスクも高くなります。
加えて、中心静脈カテーテルなどのデバイスを使用する機会も多く、カテーテル関連血流感染症にも注意が必要です。
こうした背景から、血液内科では発熱時に菌血症を疑い、血液培養を採取する機会が多くなります。原因菌を特定できれば、適切な抗菌薬の選択にもつながります。
ただし、ここで一つ疑問が出てきます。
最初に血液培養を採取する必要性はわかりますが、発熱が続いている場合にも、繰り返し採取する必要があるのでしょうか?
血液培養は毎日採った方がよい?
日本のガイドラインではないのですが、NCCNという米国のがん医療に関するガイドラインを作成している組織が発行する「がんに関連する感染症の予防と治療(Prevention and Treatment of Cancer-Related Infections)」では、原因不明の発熱が持続している全身状態の安定した好中球減少患者では、毎日の血液培養は必ずしも必要ではないとするエビデンスが増えていると記載されています。
実際に、造血幹細胞移植後の発熱性好中球減少症患者を対象とした研究では、血液培養の採取回数を減らしても、感染性合併症の増加は観察されなかったと報告されています。ただし、比較的小規模な後方視的研究であり、すべての患者さんに当てはめられるわけではありません。
一方で、菌血症の陰性化を確認する場合など、血液培養を繰り返し採取することが重要な場面もあります。
こうしたガイドラインの考え方も参考にしながら、私自身は普段の診療で次のような状況を意識しています。もちろん、実際の採取のタイミングは患者さんの状態によって異なり、医師によっても判断が分かれる部分だと思います。
① 好中球減少が持続し、発熱が続いている場合
好中球減少が今後も続くと予想される患者さんでは、初回の血液培養が陰性でも、感染症の経過を慎重に評価する必要があります。
私は、このような患者さんで発熱が持続している場合、72時間程度を目安に血液培養を再採取することがあります。
もちろん、72時間という間隔がすべての患者さんに推奨されているわけではありません。患者さんの全身状態や、それまでの検査結果を確認しながら判断しています。
② 菌血症が確認され、陰性化を確認する必要がある場合
血液培養で原因菌が検出された場合には、抗菌薬治療によって菌血症が消失したかを確認することが重要な場合があります。
例えば、黄色ブドウ球菌の菌血症などでは、治療開始後の血液培養の再採取が推奨されています。
ただし、すべての菌血症で同じ頻度の再採取が必要なわけではなく、原因菌や感染源によって判断が異なります。
③ いったん解熱した後に、再び発熱した場合
抗菌薬治療によっていったん解熱した患者さんが、再び発熱することがあります。
この場合には、最初の感染症が十分にコントロールできていない可能性に加えて、新たな感染症が発生している可能性も考えます。
そのため、再発熱時には新たな感染症のエピソードとして評価し、血液培養の再採取を検討します。
もちろん、これら以外にも、血圧低下など全身状態が悪化した場合や、新たな感染症を疑う所見が出現した場合には、採取のタイミングを待たずに再評価が必要だと思います。
医師と看護師で、一緒に考えることも大切

なるほど。血液培養が多いのは、感染症を見逃さないためだけでなく、患者さんの経過や熱の原因によって確認したいことが違うからなんですね。

そうなんです。ただ、私たちも毎回明確な答えがあるわけではありません。『本当に必要ですか?』と聞いてもらうことで、こちらも検査の必要性を考え直すことがあります。

確かに、どうして採るのかがわかれば、患者さんにも説明しやすいですし、必要な検査だと理解して対応できますね。

そうですね。医師と看護師では患者さんを見ている視点が少し違います。その違いを共有することで、よりよい診療につながると思います。
まとめ
血液内科では、好中球減少や免疫抑制、中心静脈カテーテルの使用などによって、血流感染症を慎重に評価する必要があるため、血液培養を採取する機会が多くなります。
一方で、血液培養は多く採ればよいというものでもないと思っています。
初回の発熱、菌血症の陰性化確認、持続する発熱、解熱後の再発熱など、患者さんの状態に応じて、採取する目的とタイミングを考えることが大切ではないかと感じています。
血液培養は患者さんにも看護師さんにも(時には医師にも)負担がかかる検査です。だからこそ、必要な検査を適切なタイミングで行うことを心がけたいですね。
参考文献
- National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Prevention and Treatment of Cancer-Related Infections. https://www.nccn.org/
- Serody JS, et al. Utility of obtaining blood cultures in febrile neutropenic patients undergoing bone marrow transplantation. Bone Marrow Transplantation. 2000;26:533–538.
