こんにちは、内科医Kappaです。
今回は、新鮮凍結血漿(FFP)についてお話ししたいと思います。
FFPは、血液から細胞成分を除いた血漿を凍結保存した製剤で、主に凝固因子の補充に使用します。ほかにも血漿交換の置換液として使用することがありますが、今回は凝固因子の補充に焦点を当てたいと思います。
今は違うかもしれませんが、私が医学生だった頃はFFPについて詳しく習う機会がほとんどありませんでした。そのため、初期研修医になったばかりの頃は、そもそもFFPをどんなときに使えばよいのか、よくわかっていませんでした。
赤血球輸血や血小板輸血に比べて、FFPは「この数値になったら輸血する」という明確な基準が少なく、個人的には最も使用判断が難しい輸血製剤ではないかと思っています。
今回はガイドラインの目安に加えて、実際の診療で悩ましいところにも少し触れてみたいと思います。
手術・外傷の現場では?
大量輸血が必要な手術や外傷では、赤血球製剤とFFPを**1:1(容量比)**の割合で使用することが推奨されています。
それでは、凝固因子を補充するのだから、PTやAPTTを基準にFFPを輸血すればいいんでしょ、と思うかもしれません。
ところが、実はPTやAPTTについて、FFP輸血を開始する明確な閾値は決められていません。
PTやAPTTは凝固因子の低下を評価するために大切な検査ですが、出血の程度やFFP投与による臨床的な利益を十分に予測できるわけではないためです。
一方、フィブリノゲンについては、産科領域以外の大量出血では150 mg/dL、産科領域の大量出血では200 mg/dLを目安にFFPを使用することが弱く推奨されています。
大量輸血を必要としない手術では?
大量輸血を必要としない手術や外傷では、FFPの予防的な輸血は推奨されていません。
FFPは凝固因子を補充できる一方で、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環過負荷(TACO)、アレルギー反応などの副反応を起こす可能性があります。
そのため、必要性が明らかでない状況でFFPを投与してしまうと、利益よりも不利益が大きくなる可能性があります。
また、凝固検査に異常がある場合でも、PT、APTT、フィブリノゲンの値からFFP投与を決める明確な閾値については、十分なエビデンスがありません。そのため、ガイドラインでも総合的な臨床判断が推奨されています。ただ、それが一番難しいんですよね……。
個人的には、予定手術の場合、まずは「どうして凝固検査に異常があるのか」を考えることが先かなと思います。原因によってはFFP以外の対応が適切なこともありますし、検査値が異常だからといって必ずしも出血リスクが高いとは限りません。
一方、緊急手術や避けられない処置の場合には、凝固検査の異常だけではなく、実際の出血傾向、予定される処置の出血リスクなどを踏まえてFFPを使用するか判断することになると思います。
外傷・手術ではない場面、内科的な場面では?
手術や外傷ではない場面は、さらに難しいかもしれません。
血小板輸血と同じように、凝固因子が低下しているなら予防的にFFPを輸血したくなるかもしれませんが、一定のPT、APTT、フィブリノゲン値を閾値としてFFPを輸血することについては、十分なエビデンスがないのが現状です。
もちろん、凝固検査に意味がないというわけではありません。凝固因子の異常を評価し、その原因や経過を考えることは大切です。
血液内科の領域では、急性前骨髄球性白血病(APL)が代表的な例かと思います。APLでは重篤な出血を起こすリスクが高いため、一般的にフィブリノゲン150 mg/dL以上を維持することを目標に、FFPなどによる凝固因子補充を行います。
また、播種性血管内凝固(DIC)については、日本血栓止血学会のDIC診療ガイドライン2024が参考になります。
特に血液疾患に伴うDICでは、フィブリノゲン150 mg/dL以上を目標とする補充療法が示されています。凝固因子の消耗による出血がある場合には、PT-INR 2.0以上、PT活性30%以下、フィブリノゲン150 mg/dL未満などがFFP投与を検討する目安になります。
ただし、DICと一言でいっても原因疾患によって病態はさまざまです。例えば、敗血症に伴うDICでは、凝固異常があっても出血症状が目立たない場合があります。
そのため、すべてのDICに対して同じ数値を基準にFFPを投与すればよい、というわけではありません。
この領域も、FFPの有効性を示す質の高いエビデンスを作ることが難しい分野なのだと思います。
では、実際の診療ではどう考える?
ここからは、ガイドラインで確立した基準というよりも、私自身の臨床的な考え方です。
私の場合、APLではフィブリノゲン150 mg/dLを下回らないように、積極的な補充を考えます。
それ以外のDICでは、出血傾向や基礎疾患によって対応を変えます。フィブリノゲン100〜150 mg/dL程度を一つの目安として意識することはありますが、血液疾患に伴う出血リスクの高いDICでは150 mg/dL以上を維持することが重要ですし、出血症状の乏しいDICでは必ずしもFFP投与が必要とは限りません。
さらに、それ以外の原因でフィブリノゲンが低下している場合には、75〜100 mg/dL程度まで低下すると凝固因子の補充が必要かをより慎重に検討することがあります。ただし、これはあくまで個人的な判断の際に意識する数値であり、この値を下回れば必ずFFPを輸血するという意味ではありません。出血がなく、侵襲的な処置の予定もなければ、補充せずに経過を見ることもあります。
結局のところ、凝固検査の数値だけではなく、なぜ凝固因子が低下しているのか、出血しているのか、これから出血するリスクがあるのかを総合的に考えることが大切なのだと思います。
なお、これらの個人的な目安は、FFP投与の有効性や安全性が検証された閾値ではありません。実際の治療では、病態に応じたガイドラインや施設の診療方針を優先してください。
まとめ
今回はFFPについてまとめてみました。
赤血球輸血や血小板輸血と比較すると、FFPは投与の明確な閾値を定めることが難しく、個人的には最も使用判断が難しい輸血製剤ではないかと感じています。
その背景には、凝固異常の原因や出血リスクが患者さんごとに大きく異なることに加えて、FFPの有効性について質の高いエビデンスを作ること自体が難しいという問題もあります。
今回の記事ではガイドラインの推奨に加えて、私自身の臨床経験に基づく考え方も紹介しました。
FFPは、数値だけを見て機械的に投与するのではなく、患者さんの病態や出血リスクを踏まえて判断することが大切です。
迷う場面では、血液内科、輸血部、麻酔科、集中治療科など、患者さんの診療に関わる先生方と相談しながら適応を考えるのがよいのではないかと思います。
参考文献・参考資料
- 日本輸血・細胞治療学会ガイドライン委員会.輸血療法実践ガイド.日本輸血細胞治療学会誌.2026;72(3):521–570.
- 長谷川雄一ほか.科学的根拠に基づいた新鮮凍結血漿の使用ガイドライン(改訂第3版).日本輸血細胞治療学会誌.2026;72(3):571–592.
- 日本血栓止血学会 DIC診療ガイドライン作成委員会.播種性血管内凝固(DIC)診療ガイドライン2024.血栓止血誌.2025;36(1):68–156.
※本記事は上記資料を参考に執筆した個人の解説です。一部には筆者の臨床経験に基づく意見が含まれます。実際の輸血の適応は、患者さんの病態や施設の診療体制などを踏まえて判断してください。

