こんにちは、内科医Kappaです。
今回は、血小板製剤(PC)を用いた「血小板輸血」についてお話ししたいと思います。
赤血球輸血ではHbが重要な判断材料になりますが、血小板輸血では、その名のとおり血小板数が重要になります。
ただし、検査値だけで輸血の必要性が決まるわけではありません。出血の有無や血小板が減っている原因、予定している処置など、患者さんの背景を踏まえて判断する必要があります。
今回は日本輸血・細胞治療学会のガイドラインの目安に加えて、実際の診療で悩ましいところにも少し触れてみたいと思います。
赤血球輸血については以前の記事をご参考ください!

血小板輸血はいつ行う?
血小板輸血の目的は、血小板の減少や機能異常による出血を予防したり、出血を止めたりすることです。
血液内科では、化学療法による骨髄抑制などで血小板数が低下した患者さんに、出血を防ぐための「予防的な血小板輸血」を行うことがあります。
例えば、化学療法後の血小板減少などで、出血や特別なリスク因子のない患者さんでは、血小板数1万/μL未満が予防的輸血を検討する目安になります。ただし、すべての血小板減少に共通する基準ではありません。
ただ、血小板製剤が発注してすぐに届くとは限らないため、個人的には、血小板数の推移から翌日には1万/μL未満になると予測される場合、輸血部門と相談して前もって製剤を手配することも大切だと思っています(施設によっては、当日に発注しても届くのはその日の夜、ということもあるかと思います)。
もちろん、早めに手配することと、早めに輸血することは別で、実際に投与するかどうかは、その時点の血小板数や患者さんの状態を踏まえて判断します。
一方、感染症や発熱、活動性出血などがある場合には、より高い血小板数を目安に対応することがあります。活動性出血では5万/μL以上、外傷性頭蓋内出血では10万/μL以上の維持が目標とされています。
また、手術や侵襲的処置を予定している場合も、処置の種類や出血リスクに応じて輸血の必要性を判断します。
例えば、一般的な外科手術では血小板数5万/μLを目安としますが、すべての処置で同じ水準が必要なわけではありません。腰椎穿刺では、血小板製剤使用ガイドラインの2025年改訂版で、2万/μL未満では輸血を行い、2〜5万/μLでは患者背景や出血リスクに応じて個別に判断する方針が示されています。
血小板輸血では、血小板数だけでなく、なぜ減少しているのか、どのような出血リスクがあるのか、どのような処置を予定しているのかを考えることが重要です。
血小板輸血をしても増えないことがある?
血小板輸血を行ったのに、期待したほど血小板数が増えない患者さんに遭遇することがあります。
このような状態を、血小板輸血不応と呼びます。
原因には、感染症、発熱、播種性血管内凝固(DIC)、脾腫などの非免疫学的要因と、HLA抗体などによる免疫学的要因があります。また、免疫性血小板減少症(ITP)でも、輸血した血小板が破壊されやすく、十分な増加が得られないことがあります。
輸血効果の評価に用いるのが、補正血小板増加数、略してCCIです。輸血前後の血小板数の変化を、患者さんの体格や輸血した血小板量で補正する指標です。
CCIはアプリなどでも計算できるので、ここでは計算式は省きます。輸血翌日の血小板増加数が1万/μL未満で、かつCCIが5,000未満の場合に輸血不応と判定し、同様の反応が繰り返されることで確定するとされています。
以前は「1時間値」として、輸血終了後1時間のCCIも確認していました。しかし、血小板製剤使用ガイドラインの2025年改訂版では、輸血直後のCCIは免疫性・非免疫性の鑑別精度や再現性に限界があるとして、確定診断のためのルーチン評価には推奨しない方針となっています。
HLA抗体などによる免疫性の輸血不応が疑われる場合には、HLA抗体の検査を行い、陽性であればHLA適合血小板の使用を検討します。
ただし、輸血翌日の血小板数が増加していないというだけで、HLA抗体が原因と判断することはできません。
ガイドラインでは、まず非免疫学的要因を確認し、対応することが推奨されています(ただ、それがなかなか難しいんですよね……)。
活動性の感染症や持続する出血がないか、血小板数や凝固検査の推移、臨床所見からDICが疑われないか、薬剤や脾腫の影響はどうか、といった点を確認し、輸血部門とも相談しながら考えていきたいところです。
血小板輸血不応については、少し専門的な内容になるため、別の記事で詳しく解説できたらと思っています。
大量出血のときはどうする?
ここまでは主に、血小板数が低下した患者さんに対する、出血を予防するための輸血についてお話ししました。一方、外傷などで大量に出血している場合には、対応が異なります。
大量出血が予想される外傷では、血小板数が下がるのを確認してから対応していては、間に合わないことがあります。そのため、赤血球だけでなく、血小板や新鮮凍結血漿(FFP)も早期から組み合わせて投与します。
大量出血時には、「血小板数が何万になったら輸血するか」だけでなく、出血の勢いや全身状態を踏まえた迅速な対応が重要です(ただ、これも言うは易し、行うは難し、の部分ではあります)。
このあたりも詳しく話すと長くなるので、別の機会に触れていけたらと思っています。
まとめ
血小板輸血は、診療科によっては使う機会が少ないかもしれませんが、出血の予防や止血を支える大切な治療です。
判断の手がかりとなるのは血小板数ですが、同じ数値でも、出血の有無や原因、予定している処置によって対応は変わります。さらに実際の診療では、製剤が届くまでの時間も考えなければなりません。
ガイドラインの目安を知っておくことは、その出発点です。そのうえで、目の前の患者さんの状態と、自分の施設でできることを踏まえて判断していく必要があります。
私自身も、教科書やガイドラインを読みながら「なるほど」と思い、現場で「さて、どうしよう」と考えることの繰り返しです。
数値を確認するだけで終わらず、その背景まで考える。血小板輸血でも、その姿勢を大切にしたいと思います。
次回は、新鮮凍結血漿(FFP)についてお話しします。
参考文献
- 高見昭良ほか.科学的根拠に基づいた血小板製剤の使用ガイドライン:2025年改訂版.日本輸血細胞治療学会誌.2026;72(1):17–39.
- 日本輸血・細胞治療学会ガイドライン委員会.輸血療法実践ガイド.日本輸血細胞治療学会誌.2026;72(3):521–570.
- 松本雅則ほか.大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン(第2版).日本輸血細胞治療学会誌.2025;71(6):750–798.
