医師の海外留学、研究留学だけじゃない? 研究・臨床・海外留学について

こんにちは、内科医Kappaです。

学生さんや研修医の皆さん、そして専門研修を終えた若手の皆さん。海外留学に興味はありますか?

私は学生の頃から、海外留学に憧れていました。研究留学から帰ってきた先生のお話を聞く機会がちょくちょくあり、「いつか自分も行ってみたいな〜」と思っていたんですよね。

もっとも、当時は「海外で働く自分、なんか格好よさそう」くらいの、かなりふんわりした憧れでした(笑)。

その後、いろいろと調べたり、実際に留学した先生のお話を聞いたりする中で、医師の海外留学にもいくつかの道があることを知りました。

今回は、私自身の経験や周囲の方のお話を交えながら、研究留学・臨床留学・大学院留学の3つをご紹介します。

企業に勤めて海外赴任するなど、ほかにも海外へ行く方法はあると思いますが、今回は私や周囲の経験をもとにお話しできる範囲に絞っています。

医師の留学といえば? 研究留学

医師の留学と聞いて、まず研究留学を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

医学部で学んでいると、研究留学を経験した大学の先生のお話を聞く機会があります。私が最初に憧れたのも、この形でした。

よく聞くのは、教授や上の先生から、以前の留学先や共同研究先を紹介していただく方法です。受け入れ先とのつながりがあると、研究内容や人柄を伝えてもらいやすく、相談を進めるうえで心強いと思います。ただし、ポジションや給与については、受け入れ先の研究費や雇用条件によって変わります。

一方で、自分で研究室を探して応募する方法もあります。

私はこちらの方法で、まず英文の履歴書である CV(Curriculum Vitae) を作り、自分の研究に近いテーマを扱っている研究室へメールを送りました。

作戦と呼べるほど立派なものではなく、「興味を持ってもらえそうなところに、まず連絡してみる」というものです。幸い、そのうちの一つの研究室が興味を持ってくださり、面談までたどり着くことができました。

参考までに、実際に送ったメールを、個人名や研究内容を伏せた形で載せておきます。少し長いので、今は読み飛ばしていただいても大丈夫です。

応募される際は、ご自身の研究や経験に合わせて書き換えてください。特に、フェローシップの採択歴や資金獲得の見込み、臨床経験などは、実際の状況に合わせた変更・削除が必要です。

研究室への応募メールの例

Dear Prof. [送る研究室の長の名字],

I hope this email finds you well. My name is [自分の名前], and I am currently a Ph.D. candidate in [専門分野] at [所属大学・研究機関名], [国名], under the supervision of Prof. [指導教員の名前] and Prof. [指導教員の名前]. My research focuses on [研究対象・分野], particularly [自身の具体的な研究内容] ([自身の関連論文の書誌情報・URL]).

I am writing to inquire about the availability of a postdoctoral position in your laboratory starting [希望する着任時期].

Throughout my Ph.D. research, I have greatly admired your work on [応募先の研究室の研究分野]. In particular, your study on [関心を持った研究内容] ([応募先の関連論文の書誌情報]) has been highly influential in my own research, as my previous studies have also focused on [自身の研究との共通点]. Additionally, my clinical experience in treating [診療経験のある疾患・領域] has provided me with knowledge of disease biology and treatment. I believe that my research experience and clinical background could contribute to ongoing projects in your laboratory. I am eager to further develop my research skills under your guidance.

Although I do not yet have experience in [未経験の実験手技], I am highly motivated to learn and committed to mastering new research techniques. My goal is to pursue a career specializing in [将来専門としたい研究・診療分野], and I believe that working in your laboratory would be a valuable step toward achieving this aspiration.

I understand that funding constraints may limit new postdoctoral appointments. I was a recipient of [過去に採択されたフェローシップの名称] from [開始年] to [終了年], and I plan to apply for postdoctoral fellowships from [応募予定の助成機関・フェローシップの名称] to support my salary.

I have attached my curriculum vitae for your review. Thank you for your time and consideration. I would greatly appreciate the opportunity to discuss how my background and experience could contribute to your research team. I look forward to hearing from you.

Best regards,
[自分の名前]


応募メールでは自分の強みをきちんと伝えた方がよいと聞き、少し自信を持った書き方にしています。ただ、実際には毎回ビクビクしながら送信ボタンを押していました。

それでも、連絡してみなければ始まらないのも事実です。身近に紹介してくれる先生がいなくても、自分で応募する道があることは知っておいてよいと思います。

海外で医師として働く、臨床留学

海外で患者さんの診療に携わりたい方には、臨床留学という選択肢があります。

私がよく見聞きしてきたのは、米国でレジデンシーなどの臨床研修を目指すルートです。

米国でこうした臨床研修を目指す場合、一般にECFMG認証が必要になります。その取得には、USMLE Step 1とStep 2 CKへの合格、OET Medicineでの基準スコアの取得に加え、所定のPathwayや学歴・資格の確認などの要件を満たす必要があります(2026年10月時点)。

私もStep 1とStep 2 CKには合格しました。ただ、私が学生だった頃は、現在のPathwaysとは制度が異なり、Step 2 CSという実技試験への合格が必要でした。

当時のStep 2 CSは米国まで受けに行く必要があり、そこで重い腰が上がらず……。

というと渡航の手間が原因のようですが、実際には英会話への自信のなさも、かなり大きかったです(笑)。結局、その先には進めませんでした。

一方で、日本で専門研修を積んでから、海外の臨床フェローシップを目指す道もあります。

例えばオーストラリアには、海外の専門医や専門研修の修了が近い医師などを対象に、通常最長24か月の専門研修を行うための制度があります。受け入れ先の確保に加えて、資格審査、英語能力、医師登録などの要件を満たし、監督のもとで研修する仕組みです。

カナダにも海外の医師を受け入れる臨床フェローシップがありますが、応募資格や医師登録、英語の要件は州やプログラムによって異なります。興味のある施設が見つかったら、その募集要項と現地の医師登録機関の条件を確認する必要があります。

カナダやオーストラリアで臨床留学を経験した先生からは、「とにかく、いろいろなフェローシップに応募してみること」と教えていただきました。

もちろん、応募条件を満たしているかの確認は必要ですが、最初から「自分には無理だろう」と候補を狭めすぎなくてもよいのかもしれません。

海外で学位を取る、大学院留学

「海外で、これを勉強してみたい」というテーマがある方には、大学院留学という方法もあります。

医師の大学院留学で私がよく見聞きするのは、公衆衛生大学院で MPH(Master of Public Health:公衆衛生学修士) を取得する道です。

厚生労働省の医系技官には、人事院の派遣研修制度を利用して、海外の公衆衛生大学院などで学ぶ機会もあります。留学が、行政官としての専門性を高めるキャリア形成の一環に位置づけられているのは、興味深いところです。

また、私の知り合いには、MBA(Master of Business Administration:経営学修士) を取得するために米国の大学院へ進んだ方もいました。

その人は以前から「留学したい」と話していて、コツコツと勉強を続け、出願に必要なTOEFLのスコアを取得し、本当に2年間の留学を実現されました。

将来は病院経営に携わりたいと聞き、「なるほど、医師だからといって、留学先まで医学にこだわる必要はないんだな」と気づかされました。

私などは「医師の留学=医学の研究」と考えていたので、視野が広がるお話でした。

一方で、大学院留学を考えるうえで、気になるのはやはりお金です。学費に加えて、現地での生活費も必要になります。

私も一時期、大学院留学を考えました。ただ、すでに子どもがいて、家族の生活費まで含めて計算すると、なかなか厳しく……。電卓をたたくうちに、いったん現実に戻ってきました。

奨学金や派遣制度を利用できる場合もありますが、家族の状況も含めて、資金計画を考えておきたいところです。

自分に合う留学の形があっていい

今回は、研究・臨床・大学院という3つの留学方法をご紹介しました。

私の場合は、興味のあることや家族の状況、費用などを考えて、研究留学を選びました。臨床留学や大学院留学にも未練はありましたが、その時の自分に合っていたのが研究留学だったのだと思います。

留学といっても、海外で何をしたいのかは人それぞれです。

研究にじっくり取り組みたい。海外の診療を経験したい。公衆衛生や経営を学びたい。そんな関心に合わせて、留学の形を考えてよいのではないでしょうか。

そして、自分や周囲の方の経験を振り返ると、留学につながるのは、一つひとつの行動なのかなと感じます。

英語を勉強する、経験者の話を聞く、募集情報を調べる、気になる研究室にメールを送ってみる。どれも、それだけで留学が決まるわけではありませんが、次のきっかけになることはあります。

最初から完璧な計画がなくても、まずは気になる留学先を一つ調べるくらいで、十分な一歩だと思います。

学生の時の「いつか行ってみたいな〜」から始まった私も、ずいぶん時間をかけながら、留学につながりました。

この記事が、海外に興味のある皆さんの選択肢を少し広げたり、最初の一歩を踏み出すきっかけになったりすれば嬉しいです!

参考資料

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